相続時精算課税制度の手続き方法|必要書類と申告期限を解説
吉原 武志
よしはら たけし
- 3級ファイナンシャル・プランニング技能士
【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング
【自己紹介】業界歴14年の経験を活かし、お客様お一人おひとりの生活環境や将来のご希望を丁寧に伺い、寄り添った提案をいたします。
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相続時精算課税制度の手続き方法|必要書類と申告期限を解説
相続時精算課税制度を利用するには、定められた期限内に正しい方法で手続きを完了させる必要があります。この手続きの基本的な流れは、必要書類を収集し、贈与税の申告書を作成して税務署に提出するというものです。
この記事では、具体的な手順や必要書類、注意すべき申告期限について詳しく解説します。
【この記事でわかること】
・2024年(令和6年)から新設された基礎控除を含む制度の仕組み
・申告に必要な書類と手続きの具体的な3ステップ
・一度選択すると「暦年課税」に戻れない等の重要な注意点
相続時精算課税制度とは?2024年からの新ルールを解説
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ生前贈与を行う際に選択できる制度です。(※贈与年の1月1日時点の年齢)
通算2,500万円までの贈与が非課税となる特別控除枠があります。
2024年(令和6年)の税制改正により、この特別控除とは別に、毎年110万円の基礎控除が新たに設けられました。
この基礎控除額までの贈与であれば、贈与税の申告や納税が不要となり、相続財産にも加算されません。
贈与税の計算方法や非課税の特例については「500万円の贈与税はいくら?計算方法と非課税にする特例を解説」で詳しく紹介しています。
相続時精算課税制度の手続きは3ステップで完了
相続時精算課税制度を利用するための手続きは、大きく分けて3つのステップで進みます。
この全体的な流れを把握しておくことで、具体的な手続きをスムーズに進めることが可能です。
基本的な方法は、必要書類の準備、申告書・届出書の作成、税務署への提出という手順になります。
各ステップを確実に行うことが重要です。
STEP1:必要書類を漏れなく準備する
最初に行うべきことは、申告に必要な書類をすべて集めることです。具体的には、税務署で入手する「相続時精算課税選択届出書」や贈与税の申告書用紙のほか、贈与者と受贈者の関係を証明するための戸籍謄本などが必要となります。市区町村役場で取得する書類は発行に時間がかかる場合もあるため、申告期限に間に合うよう早めに準備を始めましょう。
STEP2:贈与税の申告書と届出書を作成する
必要書類が揃ったら、次に贈与税の申告書と「相続時精算課税選択届出書」を作成します。
これらの書類の様式や書き方の見本は、国税庁のホームページで確認できます。
特に、贈与財産の価額や控除額の計算は間違いやすいポイントです。
記載例を参考にしながら、正確な情報を記入するように心がけ、漏れや誤りがないか提出前に再度確認することが大切ですです。
STEP3:管轄の税務署へ期限内に提出する
作成した申告書と添付書類一式は、定められた申告期限内に管轄の税務署へ提出します。
提出方法は、税務署の窓口へ直接持参する、郵送で送付する、あるいはe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してインターネット経由で申告する方法があります。
期限を過ぎても申告は可能ですが、無申告加算税や延滞税が課される場合があるため、余裕を持った提出が求められます。
【書類一覧】相続時精算課税制度の手続きに必要な全書類
相続時精算課税制度の手続きでは、複数の書類を揃える必要があります。
これらの書類には、税務署の窓口や国税庁のホームページから入手するものと、市区町村役場などで取得するものがあります。
具体的には「相続時精算課税選択届出書」や「贈与税の申告書」に加え、受贈者の戸籍謄本、贈与者の住民票の写しなどが該当します。
事前に必要な書類をリストアップし、漏れなく準備しましょう。
相続時精算課税選択届出書
「相続時精算課税選択届出書」は、この制度を初めて利用する年に必ず提出しなければならない最も重要な書類です。
この書類を贈与税の申告書に添付して提出することで、制度の適用を受ける意思表示となります。
贈与者と受贈者の情報、贈与年月日などを正確に記載する必要があります。
様式は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
受贈者(子や孫)の戸籍謄本または抄本
受贈者、つまり贈与を受ける子や孫の戸籍謄本または抄本も必要な書類の一つです。
これは、受贈者の氏名、生年月日、そして贈与者との親族関係(子または孫であること)を公的に証明するために提出します。
受贈者の本籍地がある市区町村役場で取得可能です。
通常、贈与の日から後に作成されたものを求められます。
贈与者(親や祖父母)に関する書類(住民票の写しなど)
贈与者(親や祖父母など、贈与を行う方)に関する書類として、住民票の写しや戸籍の附票の写しなどが必要となる場合があります。これらの書類は、贈与者の氏名や生年月日などを確認するために用いられます。贈与者の住所地の市区町村役場で取得できます。
【見本付き】申告書・届出書の書き方のポイント
贈与税の申告書や相続時精算課税選択届出書は、項目が多く複雑に感じられるかもしれません。
しかし、国税庁がウェブサイトで公開している書き方の手引きや記載例(見本)を参考にすれば、個人でも作成することが可能です。
特に間違いやすい箇所や、必ず記載すべき重要な項目のポイントを理解しておくことで、スムーズに作業を進められます。
「相続時精算課税選択届出書」の記入例
「相続時精算課税選択届出書」には、贈与を受けた人と贈与した人の住所、氏名、生年月日などを記入します。国税庁のホームページにある記載見本を確認しながら、各項目を正確に埋めていきましょう。
「贈与税の申告書(第一表・第二表)」の主要項目
贈与税の申告は、主に第一表と第二表を使用します。
まず「第二表(相続時精算課税の計算明細書)」で、贈与された財産の価額から特別控除額(最大2,500万円)と基礎控除額(110万円)を差し引いて課税価格を計算します。
その結果を「第一表」に転記して、最終的な申告税額を算出する流れです。
国税庁の記載見本を参照しながら、順を追って記入していきましょう。
手続きの期限と提出先を正確に把握しよう
相続時精算課税制度を利用するためには、法律で定められた手続きの期限と提出先を守ることが絶対条件です。
この申告期間を過ぎてしまうと、原則として制度の適用を受けることができず、多額の贈与税が課される可能性があります。
いつまでに、どこへ書類を提出すればよいのかを事前に正確に把握しておくことが、手続きを成功させる上で不可欠です。
申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで
相続時精算課税制度を選択するための申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの期間です。
この期間内に、必要な書類をすべて揃え、税務署へ提出を完了させなければなりません。
確定申告の時期と重なるため、税務署は大変混雑します。
書類の準備や作成には時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
提出先は贈与を受けた人(受贈者)の住所地を管轄する税務署
作成した申告書と添付書類の提出先は、贈与をした人の住所地ではなく、贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署です。
管轄の税務署がどこになるかは、国税庁のウェブサイトで確認できます。
提出方法は、税務署の窓口に直接持参するほか、郵送や、e-Taxを利用してネット経由で提出することも可能です。
手続きに着手する前に知っておきたい3つの注意点
相続時精算課税制度は、まとまった財産を早期に移転できるメリットがある一方で、いくつかの重要な注意点も存在します。
一度選択すると取り消しができないという大きな制約があるため、手続きを始める前にこれらの注意点を十分に理解しておく必要があります。
メリットとデメリットを比較検討し、自分の家族の状況にとって本当に最適な選択なのかを慎重に判断してください。
一度選択すると暦年課税には二度と戻せない
相続時精算課税制度を選択する際の重要な注意点として、一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税へ変更することはできません。この選択は将来にわたり影響を及ぼすため、長期的な視点を持って慎重に検討することが重要です。
なお、相続時精算課税制度を選択した場合、2024年1月1日以降の贈与において、基礎控除額以下の贈与は相続財産に加算されません。しかし、基礎控除額を超える部分については、贈与時の価額で相続財産に加算されることになります。
贈与された財産はすべて相続税の課税対象となる
この制度を利用して贈与された財産は、贈与者が亡くなった時、相続財産に加算されて相続税の計算対象となります。
2,500万円の特別控除はあくまで贈与税に対するものであり、相続税が非課税になるわけではない点に注意が必要です。
生命保険の非課税枠のように相続税そのものが減るわけではないため、最終的な相続税額をシミュレーションした上で判断することが重要です。
土地の評価額を減額できる「小規模宅地等の特例」が適用できない
相続時に居住用や事業用の土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」は、相続や遺贈によって取得した不動産に適用される制度です。
生前贈与によって取得した土地にはこの特例を適用できません。
したがって、将来この特例の活用を考えている場合は、生前贈与で土地を渡すことがかえって不利になる可能性もあるため、注意が必要です。
小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例とは?相続税が8割減になる適用要件をわかりやすく解説」で詳しく紹介しています。
複雑な手続きは専門家への相談も一つの手段
相続時精算課税制度の手続きは、贈与財産が現預金のみといったシンプルなケースであれば個人でも対応可能です。
しかし、土地や非上場株式などが含まれると財産評価が複雑になり、専門的な知識が求められます。
手続きに不安がある場合や、暦年課税とどちらが有利か判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談するのも有効です。
相談費用や手数料はかかりますが、正確な申告と節税につながる적確なアドバイスが期待できます。
【特殊なケース】過去に親が制度を利用したか調べる方法
相続が発生した際、被相続人である親が過去に特定の子や孫に対して相続時精算課税制度を利用していたかどうかが不明な場合があります。
この情報を確認するための方法として、相続人が税務署に対して「開示請求」を行う手続きがあります。この請求により、過去の贈与税の申告状況を照会できます。
手続きが専門的なため、相続税申告を依頼する税理士を通じて行うのが一般的です。
相続に関するお悩みの解決事例
相続は、誰にとっても身近な問題ですが、その悩みは一人ひとり異なります。
ここでは、実際に寄せられたご相談の中から、専門家のアドバイスによって不安が解消され、次の一歩を踏み出すことができた事例をご紹介します。
事例1:何から始めればよいか分からなかった親の相続準備
親の年齢を考え、相続の準備を始めなければと感じていたものの、具体的に何から手をつければよいのか全く分からず、漠然とした不安を抱えていました。
専門家に相談したところ、まずは相続の全体像を把握し、やるべきことの順番を整理してもらえました。
これにより、家族で前向きに話し合う良いきっかけを作ることができました。
事例2:将来相続する予定の実家の処分に関する悩み
将来的に相続する予定の実家について、売却するべきか、賃貸などで活用するべきか、あるいはそのまま保有し続けるべきか、方針を決められずに悩んでいました。
不動産の専門家から、土地や建物の状況に応じた選択肢や、それぞれのメリット・デメリット、関連する税金や手続きの流れについて具体的な説明を受け、家族で検討すべきポイントが明確になりました。
土地の贈与税や非課税の特例については「土地の贈与税がかからない方法|非課税の特例や相続との比較を解説」で詳しく紹介しています。
事例3:子供がいない夫婦の相続に対する漠然とした不安
私たち夫婦には子供がいないため、どちらか一方に万が一のことがあった場合、財産が誰に相続されるのか、手続きはどうなるのかが分からず、漠然とした不安を感じていました。
専門家から、法律上の相続人の範囲や相続割合、そして生前の対策として遺言書の作成といった選択肢について丁寧に説明を受け、安心して将来への備えを進められるようになりました。
相続人がいない場合の財産については「相続人がいない場合の財産はどうなる?国庫帰属への流れと生前対策」で詳しく紹介しています。
相続時精算課税制度の手続きに関するよくある質問
ここでは、相続時精算課税制度の手続きに関して、特に多く寄せられる質問とそれに対する回答をまとめました。
手続きを進める上での疑問や不安の解消にお役立てください。
- Q相続時精算課税制度の手続きは税理士なしで自分でもできますか?
- A
贈与財産が現金や預貯金のみで内容が単純な場合は、自分で手続きすることも可能です。
国税庁のサイトで手引きや記載例も公開されています。
ただし、不動産の評価が絡むなど内容が複雑な場合や、節税面で最適な選択か不安な場合は、税理士に依頼する方が安心です。
- Q110万円以下の贈与でも初年度の届出は必要ですか?
- A
はい、必ず必要です。
年110万円の基礎控除は、相続時精算課税制度の選択を届け出た後から適用されるルールです。
そのため、制度を利用する最初の年は、贈与額が110万円以下で納税額が0円の場合でも、必ず申告書と選択届出書を期限内に提出しなければなりません。
- Q相続時精算課税選択届出書の提出を忘れたらどうなりますか?
- A
申告期限内に相続時精算課税選択届出書を提出しなかった場合、その年の贈与は暦年課税として扱われます。
この場合、相続時精算課税制度の2,500万円の特別控除は適用されません。
贈与額が110万円の基礎控除を超えていれば、通常の贈与税が課されることになります。
みなし贈与による課税や回避方法については「みなし贈与とは?贈与税がかかるケースと回避する方法、注意点を解説」で詳しく紹介しています。
マネナビが選ばれる3つの理由
相続や老後のお金に関する悩みは、複雑でデリケートなものが多く、誰に相談すればよいか迷うことも少なくありません。
マネナビが、多くの方に相談の窓口として選ばれている理由を3つのポイントでご紹介します。
結論を急がず、考えるべきことの順番を整理
お金に関する悩みは、不安から焦って結論を急いでしまいがちです。
マネナビでは、まず相談者の状況や気持ちを丁寧に伺い、何が問題で、どこから手をつけるべきかを一緒に整理することから始めます。
問題の全体像と考えるべき順番を明確にすることで、落ち着いて最適な判断を下すための土台作りをサポートします。
専門用語を避けた分かりやすい説明を徹底
相続や税金、保険の制度には専門用語が多く、一般の方には分かりにくいことが少なくありません。
私たちは、相談者が内容を正しく理解し、納得して判断できるよう、できる限り専門用語を避け、平易な言葉で分かりやすく説明することを徹底しています。
初めての方でも安心してご相談いただける環境を大切にしています。
状況に合わせて最適な専門家を紹介
ご相談内容を整理した結果、具体的な手続きや専門的な判断が必要になるケースもあります。
その際は、相談者の状況やご希望に応じて、相続に強い税理士や、不動産、保険など、各分野の信頼できる専門家を中立的な立場でご紹介します。
どこに相談すればよいか分からないという不安を解消し、問題解決への橋渡しを行います。
マネナビの相続に関するサービスについては「マネナビの相続サービス」で詳しく紹介しています。

まとめ
相続時精算課税制度の手続きは、定められた期限内に必要書類を揃え、贈与税の申告書と選択届出書を税務署に提出することで完了します。
2024年の改正で毎年110万円の基礎控除が新設され使いやすくなりましたが、一度選択すると暦年課税に戻れないといった重要な注意点もあります。
制度のメリットとデメリットを正しく理解し、手続きの流れを把握した上で、慎重に検討することが大切ですです。
自分の場合はどう考える?
不安を整理したい方へ
記事を読んで「自分のケースではどうだろう?」と感じたら、状況を整理するところから始められます。