居住権とは?相続で家に住み続ける権利と配偶者居住権を解説

  • 公開日:2026.07.12
  • 更新日:2026.07.12
漢那 彩加
執筆者

漢那 彩加

かんな あやか

  • 相続診断士®
  • 3級ファイナンシャル・プランニング技能士

【専門分野・得意分野】相続・生命保険
【自己紹介】相続と終活についての窓口スタッフとして、経験豊富な個別相談経験を活かし、お客様の心に寄り添う提案を大切にします。

【所属会社名】株式会社鎌倉新書ライフパートナーズ
https://www.kamakura-life.co.jp/

居住権とは?相続で家に住み続ける権利と配偶者居住権を解説

相続が発生した際、残された配偶者が「今まで住んでいた家にこれからも住み続けられるのか」という不安を抱えるケースは少なくありません。
この不安に応えるための権利が「居住権」です。
本記事では、居住権の基本的な意味から、特に相続において重要な「配偶者居住権」について、その要件やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

配偶者の居住に関する権利を正しく理解し、安心して生活を送るための住宅の知識として役立ててください。

そもそも居住権とは?法律で定められた権利の総称

「居住権」という言葉はよく使われますが、実は法律で明確に「居住権」という名称の権利が定められているわけではありません。
一般的に居住権とは、他人が所有する建物に住み続けることができる法的な権利の総称を意味します。
具体的には、賃貸借契約における「賃借権」や、2020年4月の民法改正で新設された「配偶者居住権」などがこれに該当します。

つまり、居住権って何?と問われた場合、それは特定の状況下で法律によって認められる「住む権利」全般の意味合いで使われる言葉だと理解しておくとよいでしょう。

【2020年4月施行】配偶者の自宅に住む権利を守る「配偶者居住権」とは

配偶者居住権は、2020年4月1日に施行された改正民法によって新設された、比較的新しい権利です。
これは、被相続人の配偶者が、相続開始時に住んでいた家に、原則として生涯にわたって無償で住み続けられる権利を指します。
日本の高齢化が進む中で、残された配偶者が住み慣れた家を失い、生活基盤が脅かされる事態を防ぐ目的で導入されました。

この制度により、自宅の所有権を他の相続人が相続した場合でも、配偶者は安定した居住環境を確保しやすくなりました。

①配偶者居住権が成立するための4つの要件

配偶者居住権が認められるためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 亡くなった方の法律上の配偶者であること。
  2. 相続が始まった時点で、亡くなった方が所有していた建物に配偶者が住んでいたこと。
  3. 遺産分割協議、遺言、または家庭裁判所の審判によって配偶者居住権を取得したことが明確にされていること。
  4. 亡くなった方が、その建物を配偶者以外の第三者と共有していなかったこと。

②配偶者居住権と所有権の具体的な違いを比較

配偶者居住権と所有権は、家に住める点は共通しますが、その効力は大きく異なります。
所有権は、その不動産を自由に売却、賃貸、担保設定できる強力な権利です。

一方、配偶者居住権は「居住」することに特化した権利であり、所有者の許可なく家を売却したり、大規模な改築をしたり、第三者に貸したりすることはできません。
税金面では、固定資産税の支払い義務は所有者にありますが、配偶者は通常の維持管理に必要な費用を負担する義務を負います。

③「配偶者短期居住権」とは何が違うのか?

配偶者短期居住権は、配偶者居住権とは異なり、遺産分割が終了するまでの一定期間、配偶者が無償で自宅に住み続けられる権利です。
遺産分割協議や遺言で配偶者居住権が設定されなかった場合でも、少なくとも相続開始から6ヶ月間は住み慣れた家から退去する必要がありません。
配偶者居住権が生涯または合意した期間続くのに対し、短期居住権はあくまで一時的な居住を保障する制度という点で明確な違いがあります。

【ケース別】居住権が問題になりやすい具体的な3つの場面

居住権は、特に家族関係や生活環境が大きく変化する場面で問題となることが多くあります。
例えば、親の相続が発生した時、夫婦が離婚する時、あるいは賃貸物件の大家から立ち退きを求められた時などです。
これらの状況では、法的に住み続けられる権利があるのか、あるとすればどのような条件を満たす必要があるのかを正しく理解しておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で重要になります。

①相続:親が亡くなった後も今の家に住み続けたい

親が亡くなった後、その持ち家に同居していた子がそのまま住み続けたいと考えるケースは少なくありません。
この場合、その家を自分が相続すれば問題ありませんが、他の兄弟などが相続したり、売却して遺産を分けたいと主張したりすると、トラブルに発展する可能性があります。
遺産分割協議で合意すれば住み続けることは可能ですが、子には配偶者居住権のような当然に居住を保護する強力な権利はないため、相続人全員の合意形成が重要になります。

②離婚:財産分与で家が夫名義になった場合に妻は住めない?

離婚時の財産分与で、夫婦で住んでいた家が夫名義となった場合、妻は法的には他人の家に住んでいる状態になるため、原則として住み続ける権利はありません。
ただし、元夫との合意があれば、賃貸借契約を結んで家賃を支払ったり、無償で住むことを認める使用貸借契約を締結したりすることで、住み続けることが可能です。
合意がないまま居住を続けると、不法占拠とみなされ、立ち退きを求められる可能性があるので注意が必要です。

③立ち退き:賃貸物件の大家から退去を求められたら拒否できるか

アパートやマンションなどの賃貸物件に住んでいる場合、借地借家法によって賃借人の権利は強く保護されています。
大家から一方的に立ち退きを求められても、正当な理由がなければ拒否することが可能です。
正当事由とは、建物の老朽化による建て替えの必要性や、大家自身がその物件に住む必要性などを指し、単に「他の人に高く貸したい」といった理由だけでは認められません。

多くの場合、立ち退き料の支払いと引き換えに退去するという形で交渉が進められます。

配偶者居住権を活用する2つのメリット

2020年に新設された配偶者居住権は、残された配偶者の生活を守る上で非常に有効な制度です。
この権利を活用することには、主に2つの大きなメリットがあります。
1つは、所有権がなくても生涯自宅に住み続けられる安心感を得られること、もう1つは、遺産分割において預貯金などの他の財産を取得しやすくなる点です。

これらのメリットを理解することで、より有利な遺産分割を実現できる可能性があります。

【メリット①】:所有権がなくても配偶者は生涯自宅に住み続けられる

配偶者居住権の最大のメリットは、自宅の所有権がなくても、配偶者が生涯にわたって住み慣れた家に住み続けられる点です。
例えば、自宅の所有権は長男が相続し、配偶者である母が配偶者居住権を取得するという分割が可能になります。

これにより、配偶者は住環境を変えることなく安定した生活を送ることができ、所有権を持つ子は将来的な不動産の管理や処分について計画を立てやすくなるなど、双方にとって利点があります。

【メリット②】:遺産分割で預貯金など他の財産も取得しやすくなる

配偶者居住権は、自宅の所有権を丸ごと相続するよりも財産としての評価額が低くなります。
遺産分割では、自宅不動産の価値を「居住権」と「居住権の負担が付いた所有権」に分けて計算します。
配偶者が取得する「居住権」の評価額が低くなる分、法定相続分に達するまで預貯金などの金融資産をより多く取得できる可能性が高まります。

これは、配偶者の老後の生活資金を確保する上で大きなメリットといえます。

配偶者居住権を設定する際の4つのデメリット・注意点

配偶者居住権はメリットの多い制度ですが、設定する際にはいくつかの注意点やデメリットも存在します。
権利の性質上、自由に家を売却したり改築したりできないといった制約が伴います。
また、権利の譲渡ができないことや、相続税の課税対象になること、権利を主張するためには登記が必要であることなど、事前に理解しておくべき重要なポイントがあります。

これらを把握せずに設定すると、後々不動産の扱いに困る可能性があります。

【注意点①】:自分の判断だけで家の売却やリフォームはできない

配偶者居住権はあくまで「住むための権利」であるため、所有者の承諾なしに家を売却したり、大規模なリフォームを行ったりすることはできません。
建物の所有者との良好な関係が前提となります。
例えば、将来的に有料老人ホームや介護施設へ入居するために家を売却して資金に換えたいと考えても、自分の判断だけでは実行不可能です。

このように、柔軟な資産活用が難しくなる点はデメリットといえるでしょう。

【注意点②】:権利を第三者に譲渡・売却することは不可能

配偶者居住権は、その配偶者一代限りの権利(一身専属権)とされており、他人に譲渡したり売却したりすることは法律で認められていません。
したがって、もし配偶者が有料老人ホームや介護施設に入居するなどして自宅に住まなくなったとしても、その権利を現金化することはできません。
この点は、所有権であれば賃貸に出したり売却したりして収益を得られる可能性があることと大きく異なります。

【注意点③】:配偶者居住権も相続税の課税対象に含まれる

配偶者居住権は法的な権利であり、財産的価値があるものとして相続税の課税対象となります。
その評価方法は、建物の価値や残りの居住可能年数(平均余命など)を基に複雑な計算式で算出されるため、専門的な知識が必要です。
所有権より評価額は低くなりますが、相続財産の一つとして申告する必要があることを忘れてはいけません。

評価額の計算を誤ると、後で追徴課税されるリスクもあります。

【注意点④】:権利を主張するためには法務局での登記が必要

配偶者居住権を取得しても、その権利を法務局で登記しなければ、第三者に対して権利を主張することができません。
例えば、家の所有権を相続した子がその不動産を第三者に売却してしまった場合、登記がなければ新しい所有者から立ち退きを求められる可能性があります。
権利を確実に保全するためには、不動産の所在地を管轄する法務局で配偶者居住権設定の登記手続きを必ず行っておく必要があります。

相続や老後の不安は「マネナビ」でまとめて整理

配偶者居住権のように、相続に関する制度は複雑で分かりにくいものです。
いきなり結論や対策を考えるのではなく、まずはご自身の状況を整理し、「何が不安なのか」「どこから考えるべきか」を明確にすることが重要です。
「マネナビ」では、相続や老後のお金に関する不安を一つひとつ整理し、次に取るべき行動が見えやすくなるようサポートしています。

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配偶者居住権について専門家への相談を検討すべきケース

配偶者居住権は比較的新しい制度であり、その適用や手続きには専門的な判断が求められる場面が少なくありません。
特に、遺言書に記載がない場合や、相続人同士で意見が対立している場合などは、当事者だけで解決しようとするとトラブルが深刻化する恐れがあります。

権利の取得や登記、税金の計算など、少しでも不安や疑問を感じたら、早めに専門家に相談することをおすすめします。

①遺言書に配偶者居住権に関する記載がない場合

亡くなった方の遺言書に配偶者居住権についての記載がない場合、この権利を取得するためには、相続人全員が参加する遺産分割協議で合意を得る必要があります。
もし、他の相続人のうち一人でも反対すれば、協議で権利を認めてもらうことはできません。

このような状況では、弁護士などの専門家が間に入ることで、法的な根拠に基づいた円満な話し合いを促し、合意形成をサポートすることが可能です。

②相続人同士の話し合いでトラブルになっている場合

配偶者居住権の設定を巡って、他の相続人、特に家の所有権を相続する予定の子などとの間で意見が対立し、トラブルになるケースは少なくありません。
感情的な対立が深まると、当事者間での解決は困難になります。
このような場合は、家庭裁判所での調停や審判に移行することも視野に入れる必要があります。

弁護士に相談すれば、法的な代理人として交渉を進めたり、裁判所での手続きを適切に進めたりすることができます。

③不動産の評価や相続税の計算が複雑で難しい場合

配偶者居住権が設定された不動産は、「配偶者居住権」と「負担付所有権」という2つの権利に分けて評価されます。この評価額の計算は、土地や建物の評価、配偶者の年齢などを基に行うため、非常に専門的で複雑です。
相続税の申告で正確な評価額を算出するには、税理士などの専門家の協力が不可欠です。

誤った計算で過少申告してしまうと、後から延滞税などのペナルティが課されるリスクがあります。

マネナビに寄せられたご相談事例

相続や老後に関する悩みは、家族構成や資産状況によって様々です。
「マネナビ」にも、配偶者居住権だけでなく、実家の処分や親の介護、老後資金など、多岐にわたるご相談が寄せられています。
具体的な事例を通じて、多くの方がどのような点に不安を感じ、どのように解決の糸口を見つけているのかをご紹介します。

事例1:何から始めればいいか分からなかった親の相続準備(60代・女性)

親の相続について、準備の必要性は感じていたものの、具体的に何から手をつければよいか分からず不安を抱えていました。
ご相談では、まず相続の全体像と考えるべきことの順番を整理しました。
それにより、家族で話し合うべきポイントが明確になり、円満な相続に向けた第一歩を踏み出すきっかけとなりました。

事例2:将来相続する実家をどうすべきか悩んでいた(50代・男性)

将来相続する予定の実家について、売却、活用、そのまま保有のどれが最善の選択なのか判断できずに悩んでいました。
不動産相続の基本的な考え方や、土地・家の名義変更手続きの流れなどを整理したことで、家族の状況に合わせて検討すべき点がクリアになり、具体的な方針を決めるための土台ができました。

事例3:親の認知症で将来のお金の管理が心配だった(60代・女性)

親の物忘れが増えてきたことから、将来認知症になった場合のお金の管理や口座凍結のリスクについて心配していました。
ご相談を通じて、認知症とお金の問題に関する基本的な知識や、成年後見制度、家族信託といった事前の備えについて整理することができ、将来の不安が軽減されました。

事例4:漠然と感じていた老後資金への不安を解消(50代・男性)

老後の資金について、漠然とした不安はありながらも、具体的に何をすべきか考えられていない状況でした。
老後資金を考える上で重要な視点や、公的年金の仕組み、資産寿命の考え方などを整理することで、現状を客観的に把握し、これから準備すべきことが明確になりました。

居住権に関するよくある質問

ここでは、居住権、特に配偶者居住権について多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式で解説します。
制度が始まった時期や、事実婚のパートナーに適用されるのか、税金の負担はどうなるのかなど、具体的な質問にお答えします。

Q
配偶者居住権はいつから始まった制度ですか?
A

配偶者居住権は、2020年4月1日に施行された改正民法によって新設された制度です。
高齢化社会が進む中で、残された配偶者が住み慣れた家を失うことなく、安定した生活を送れるようにその居住権を法的に保護する目的で導入されました。

Q
内縁の妻や夫(事実婚)でも居住権は認められますか?
A

配偶者居住権は、法律上の婚姻関係にある配偶者を対象とした制度のため、内縁の妻や夫(事実婚)には認められません。
ただし、遺言によって無償で住むことを認めてもらったり、賃貸借契約を結んだりするなど、別の方法で居住の条件を整えることは可能です。

Q
配偶者居住権を設定した場合の固定資産税は誰が支払いますか?
A

固定資産税の納税義務があるのは、その不動産の所有者です。
したがって、配偶者居住権を持つ配偶者ではなく、その建物の所有権を相続した人が支払うことになります。
ただし、配偶者は建物の通常の必要費(小規模な修繕費など)を負担する義務があります。

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まとめ

居住権は、特定の法律で定められた権利の総称であり、特に相続においては2020年から始まった配偶者居住権が重要な意味を持ちます。
この制度は、残された配偶者が所有権なしに家に住み続けられる権利を保障し、遺産分割で他の財産も受け取りやすくするメリットがあります。

一方で、家の売却や譲渡ができないなどの制約や、登記、相続税の課題もあるため、利用を検討する際は専門家へ相談することが望ましいです。

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