推定相続人とは?法定相続人との違いや範囲・順位をわかりやすく解説

  • 公開日:2026.09.03
  • 更新日:2026.09.03
松岡 一嘉
執筆者

松岡 一嘉

まつおか かずよし

  • AFP(日本FP協会認定)
  • 証券外務員一種
  • 相続診断士®
  • MBA(経営管理修士)

【専門分野・得意分野】資産運用、相続、事業承継
【自己紹介】生命保険業界22年、お客様のご状況に合わせて最適なご提案をいたします。相続が争族にならないようにご対応いたします。

【所属会社名】株式会社鎌倉新書ライフパートナーズ
https://www.kamakura-life.co.jp/

推定相続人とは?法定相続人との違いや範囲・順位をわかりやすく解説

相続の準備を始める際、「推定相続人」という言葉を目にすることがあります。これは、現時点で相続が開始したと仮定した場合に、相続人になる人を指す重要な概念です。
似た言葉である「法定相続人」との違いや、誰がどの順位で推定相続人になるのかという範囲を正確に理解しておくことが、円満な相続への第一歩です。

この記事では、推定相続人の定義から具体的な範囲、順位までをわかりやすく解説します。

【この記事でわかること】
・「推定相続人」と「法定相続人」の定義とタイミングの違い
・法律で定められている推定相続人の範囲と優先順位
・推定相続人が相続する権利を失う主なケース
・正確な相続関係者を確定させるための基本的な調査方法

推定相続人とは「現時点で相続が開始した場合に相続人となるはずの人」のこと

推定相続人とは、その名の通り「推定される相続人」を意味します。
具体的には、ある人が現時点で亡くなったと仮定した場合に、法律に基づいて遺産を相続する権利を持つことになる人を指します。
これは、相続が発生する前の「生前」の段階で使われる言葉です。

遺言書の作成や生前贈与などを検討する際に、誰が相続の当事者になるのかを明確にするために、この推定相続人の定義を理解しておく必要があります。

「法定相続人」「相続人」との違いは?ポイントは相続開始のタイミング

相続に関する用語には「推定相続人」「法定相続人」「相続人」があり、混同されがちですが、これらは使われるタイミングが異なります。
最も大きな違いは、被相続人が亡くなる前か後かという点です。
これらの言葉を正しく使い分けることで、相続に関する議論や手続きがスムーズに進みます。

それぞれの用語が指す人物とタイミングを正確に理解しましょう。

①推定相続人:相続が始まる「前」の相続人候補

推定相続人は、本人が存命中に、現時点で相続が開始した場合に相続人を表す言葉です。現時点で相続が発生した場合に、相続人になるであろうと推定される人を指します。

例えば、遺言書を作成しようとする人が自分の財産は誰が受け継ぐのかを考える際、その対象となる配偶者や子供が推定相続人にあたります。
あくまで相続開始前の候補者という位置づけです。

②法定相続人:民法の規定により相続人となる人

法定相続人は、配偶者や子など、民放で定められた相続人を指す一般的な用語です。
民法の規定に基づいて相続する権利を持つ人が法定相続人となります。
その範囲と順位は法律で明確に定められており、基本的には推定相続人と同じ人々が該当します。

被相続人の死亡によって推定が外れ、法律上の権利者として確定したのが法定相続人です。

③相続人:相続開始によって被相続人の権利義務を承継する人

相続人とは、被相続人が亡くなった時点で、民法の規定により相続人となった人をいいます。遺産分割協議は、相続人の中から相続人を選ぶ手続きではなく、相続人間で具体的な財産の取得方法を決める手続きです。遺産分割の結果、財産を取得しない相続人がいても、それだけで相続人ではなくなるわけではありません。
法定相続人全員が必ずしも財産を取得するとは限りません。

例えば、遺産分割協議の結果、特定の法定相続人が財産を相続しないと決めることもあります。また、相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

誰が推定相続人になる?範囲と優先順位を図解でわかりやすく解説

誰が推定相続人になるかの範囲と順位は、民法で定められた法定相続人の規定と同じです。推定相続人には、常に相続人となる配偶者と、優先順位が定められている血族相続人がいます。
血族相続人は、第1順位の子、第2順位の親、第3順位の兄弟姉妹の順で権利が移ります。

上位の順位の人が一人でもいる場合、下位の順位の人は推定相続人になりません。
この相続の範囲を正確に把握することが重要です。

①配偶者は常に推定相続人になる

被相続人の配偶者は、血族相続人の順位に関わらず、常に推定相続人となります
法律上の婚姻関係にある夫または妻は、血族相続人の順位にかかわらず、常に血族相続人とともに相続人となります。
ただし、これは法律婚の配偶者に限られた権利であり、内縁関係のパートナーや、すでに離婚した元配偶者は推定相続人には含まれません

配偶者は、子や親、兄弟姉妹といった血族相続人と共に財産を相続する権利を持ちます。

②【第1順位】子や孫などの直系卑属

推定相続人の第1順位は、被相続人の子です。
実子だけでなく、養子や認知した子も同等の権利を持ちます。
子がすでに亡くなっているものの、その子にさらに子(被相続人から見て孫)がいる場合は、孫が子に代わって相続する「代襲相続」が発生します。

この場合、孫が推定相続人となります。
第1順位の人が一人でもいる限り、第2順位以降の人に相続権が移ることはありません。

③【第2順位】親や祖父母などの直系尊属

第1順位である子や孫などが一人もいない場合、第2順位の推定相続人として親や祖父母などの直系尊属が対象となります。
直系尊属とは、自分より前の世代の直系の親族を指します。
具体的には、まず父母が推定相続人となり、父母が既に亡くなっている場合は祖父母が相続権を引き継ぎます。

普通養子縁組の場合は、原則として実親と養親の双方が直系尊属に含まれます。ただし、特別養子縁組では、原則として実親との法律上の親族関係が終了するため、取扱いが異なります。

④【第3順位】兄弟姉妹や甥・姪

第1順位の子や孫、第2順位の親や祖父母が誰もいない場合に限り、第3順位である兄弟姉妹が推定相続人になります。
もし兄弟姉妹の中で既に亡くなっている人がいる場合、その人に子(被相続人から見て甥・姪)がいれば、甥や姪が代わって相続します(代襲相続)。

ただし、甥や姪も亡くなっている場合、その子供がさらに代襲相続することはありません。
第3順位の代襲相続は一代限りです。

推定相続人が相続権を失う「相続欠格」と「推定相続人の廃除」

推定相続人であっても、必ずしも相続できるとは限りません。「推定」という言葉が示す通り、将来的に相続権を失う可能性があります。相続権を失うのは、主に「相続欠格」「相続廃除」のケースです。

これらの制度は、被相続人の意思を守ったり、公平性を保ったりするために設けられています。
もし該当する推定相続人がいないか、事前に確認することも重要です。

【注意点:遺言によって財産を取得できない場合】
遺言によって特定の相続人の相続分をゼロとしたり、全財産を第三者に遺贈したりすることは可能です。ただし、その相続人が遺言だけを理由として相続人の地位を失うわけではありません。また、兄弟姉妹およびその代襲相続人を除く相続人には遺留分が認められており、遺留分を侵害された場合は、受遺者や受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる可能性があります。

①犯罪行為などがあった場合の「相続欠格」

相続欠格とは、相続において不正な利益を得ようとしたり、被相続人に対して重大な犯罪行為をしたりした場合に、法律上当然に相続権が剥奪される制度です。
例えば、故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとし、そのために刑に処せられた場合や、遺言書を偽造・破棄・隠匿したなどの行為が該当します。

この場合、特別な手続きは不要で、欠格事由に該当する者は自動的に相続権を失います。
ただし、その人に子がいれば代襲相続は発生します。

②被相続人の意思で権利を剥奪する「相続廃除」

相続廃除とは、被相続人が自身の意思で特定の推定相続人から相続権を剥奪する制度です。
被相続人に対して虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合に、被相続人が家庭裁判所に申し立てるか、遺言にその旨を記すことで認められます。
単に「気に入らない」といった理由では認められません。
相続欠格と違い、被相続人の明確な意思表示と家庭裁判所の審判が必要です。

③遺言書の内容によって相続分がなくなる場合

遺言書によって、特定の推定相続人に財産を相続させないと定めることも可能です。
例えば、「長男には一切財産を渡さない」あるいは「全財産を愛人に遺贈する」といった内容の遺言があれば、指定された推定相続人は遺産を受け取れません。
ただし、兄弟姉妹以外の推定相続人には「遺留分」という最低限の相続分を主張する権利があります。

遺言で相続分がなくても、遺留分侵害額請求を行うことで一定の財産を取り戻せる可能性があります。

特定の推定相続人を相続から除外する「相続人廃除」の手続き

被相続人の意思で特定の推定相続人から相続権を奪う「相続人廃除」を行うには、法律で定められた手続きを踏む必要があります。
単に「相続させない」と伝えるだけでは法的な効力はなく、家庭裁判所の審判を経なければなりません。
虐待や侮辱といった正当な理由があることを客観的に示す必要があり、手続きの方法は生前に行う場合と、遺言で行う場合の2種類があります。

廃除の対象は「遺留分を有する推定相続人」に限られます。
つまり、原則として次の人です。

  • 配偶者
  • 子や孫などの直系卑属
  • 親や祖父母などの直系尊属

兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がないため、廃除制度の対象にはなりません。兄弟姉妹等に財産を渡したくない場合は、通常は遺言によって対応します。

①相続人廃除が認められるための正当な理由

相続人廃除が家庭裁判所に認められるためには、民法で定められた正当な理由が必要です。
具体的には、被相続人に対する虐待、被相続人に対する重大な侮辱、その他の著しい非行のいずれかに該当しなければなりません。

例えば、日常的な暴力や暴言、多額の借金を繰り返し被相続人に返済させた場合や、犯罪行為などによって被相続人との家族関係を著しく破壊した場合などが問題となります。ただし、廃除が認められるかどうかは、行為の内容、継続性、原因、家族関係などを踏まえて個別に判断されます。

②生前に家庭裁判所へ申し立てる方法

被相続人が生きている間に相続廃除の手続きを行う場合は、自身の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「推定相続人廃除審判」を申し立てます。
申立てにあたっては、廃除の理由となる虐待や侮辱などの事実を証明するための証拠(日記、録音、写真、診断書など)を準備する必要があります。
家庭裁判所が申立てを認め、審判が確定すると、その推定相続人は相続権を失います。

③遺言書に意思を残して手続きする方法

生前に手続きができない場合や、意思を固めたのが死期に近い場合などは、遺言書によって相続廃除の意思表示をすることも可能です。
この場合、遺言書に「(相続人名)を廃除する」という意思と、その理由を具体的に記載します。
被相続人の死後、遺言執行者に指定された人が家庭裁判所に対して廃除の申立て手続きを行います。

遺言執行者がいない場合は、利害関係者が選任を申し立てる必要があります。

正確な推定相続人の調査は戸籍謄本の収集から始める

遺言作成や相続対策を始めるにあたり、誰が推定相続人なのかを正確に確定させることが不可欠です。
家族関係を思い込みで判断すると、隠れた相続人が後から現れるリスクがあります。

正確な調査のためには、まず、本人の出生から現在までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得します。そのうえで、子や父母、兄弟姉妹などの生存・死亡や代襲相続関係を確認するため、関係者の戸籍も追加で取得します。必要となる戸籍の範囲は、家族構成や推定相続人の順位によって異なります。 被相続人の出生から現在までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を全て取得する必要があります。

これにより、離婚歴や認知した子の有無など、把握していなかった事実が判明することがあります。

相続に関する不安は専門家への相談で整理しよう

推定相続人の調査や相続手続きは、戸籍の収集や法律の知識が必要となり、個人で行うには時間と手間がかかります。
また、相続には税金や不動産の問題が複雑に絡み合うことも少なくありません。
何から手をつければよいか分からない、家族関係が複雑で不安があるといった場合は、一人で抱え込まずに専門家へ相談することをおすすめします。

相続に詳しい税理士や司法書士、弁護士に相談することで、状況を整理し、適切な対策を立てられます。

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相続の悩みを専門家へ相談した事例

相続に関する悩みは、家庭の状況によってさまざまです。
専門家に相談することで、漠然とした不安が解消され、具体的な次の一歩が見えてくるケースは少なくありません。
ここでは、実際に専門家へ相談することで問題解決の糸口を見つけた方の事例をいくつか紹介します。

【事例1】何から始めるべきかわからなかった親の相続準備

親の相続について考え始めたものの、具体的に何から手をつければよいのか分からず、不安を感じていた方がいました。
専門家に相談したところ、まずは相続の全体像と考えるべきことの順番を整理してもらえたことで、漠然とした不安が解消されました。
現状を把握できたことで、家族で建設的に話し合うきっかけをつくることができた事例です。

【事例2】相続予定の実家をどうすべきか判断できなかった

将来相続する予定の実家について、売却すべきか、誰かが住むべきか、あるいは賃貸に出すべきか、家族内で意見がまとまらず悩んでいた方がいました。
専門家から不動産相続の基本的な考え方や手続きの流れ、それぞれの選択肢のメリット・デメリットについて説明を受けたことで、判断材料が整理されました。
家族会議で検討すべきポイントが明確になり、円満な解決につながった事例です。

【事例3】親の認知症によるお金の管理が心配だった

親の物忘れが増えてきたことで、将来の認知症やそれに伴う財産管理に強い不安を感じていた方がいました。
専門家に相談し、認知症になった場合のお金の管理方法や、事前にできる対策(任意後見制度など)について基本的な知識を得ることができました。

不安の正体が明確になり、今から備えられることを整理できたことで、精神的な負担が軽くなった事例です。

推定相続人に関するよくある質問

ここでは、推定相続人に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。

Q
推定相続人と法定相続人は何が違うのですか?
A

最も大きな違いは「時間軸」です。
推定相続人は、相続が始まる前(生前)の段階で、将来相続人になるであろう候補者を指します。
一方で法定相続人は、相続が始まった後(死亡後)に、民法の規定に基づいて正式に相続する権利を持つ人を指します。

対象となる人物の範囲は基本的に同じです。

Q
内縁の妻や離婚した元配偶者は推定相続人になりますか?
A

いいえ、どちらも推定相続人にはなりません。
相続権が認められる配偶者は、法律上の婚姻関係にある人に限定されます。
そのため、事実婚や内縁関係のパートナーに相続権は認められていません。

また、離婚が成立した元配偶者は、その時点で相続する権利を失うため、推定相続人には該当しないのです。

Q
遺言書で推定相続人ではない人に全財産を渡せますか?
A

遺言によって、推定相続人ではない第三者に全財産を遺贈することは可能です。
しかし、兄弟姉妹を除く法定相続人には「遺留分」という最低限の相続分を主張する権利があります。
遺留分を有する相続人は、遺贈を受けた人に対して自身の遺留分を請求できるため、これが後のトラブルに発展する可能性があります。

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まとめ

推定相続人とは、現時点で相続が開始した場合に相続人になるはずの人を指し、相続開始前の生前の段階で使われる言葉です。
法定相続人とは相続開始後に使われる点で異なりますが、対象となる人の範囲と順位は民法の規定に基づき同じです。
配偶者は常に相続人となり、それに加えて子、親、兄弟姉妹の順で相続権が与えられます。

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