子供のいない夫婦の相続|よくある遺産トラブルと生前にできる相続対策

  • 公開日:2026.07.20
  • 更新日:2026.07.23
中野 雄一
執筆者

中野 雄一

なかの ゆういち

  • 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
  • 認知症サポーター

【専門分野・得意分野】
・相続・終活コンサルティング(不動産、家族信託、介護、お墓など)
・資産運用・ライフプランニング
・生命保険・医療保険
【自己紹介】
1,000世帯以上の相談実績を持つ終活の専門家。相続から不動産・保険などのお悩みに対し、幅広い知識で最適な情報を提供する。

【所属会社名】株式会社鎌倉新書ライフパートナーズ
https://www.kamakura-life.co.jp/

子供のいない夫婦の相続|よくある遺産トラブルと生前にできる相続対策

子供がいない夫婦の場合、どちらかが亡くなった際の遺産は、すべて配偶者が相続すると考えている方も少なくありません。
しかし、法律では配偶者以外にも遺産を受け取る権利を持つ相続人が定められており、その存在が思わぬトラブルにつながるケースがあります。
この記事では、子供のいない夫婦の相続における基本的なルール、起こりがちなトラブル、そして大切な配偶者に確実に財産を遺すための生前対策について解説します。

「子供がいなければ全財産が配偶者に」は間違い?相続の基本を解説

子供がいない夫婦の場合、亡くなった方の財産(遺産)は、必ずしも配偶者がすべて相続できるわけではありません。民法では、誰が遺産を相続する権利を持つか(法定相続人)とその優先順位が定められています。

子供がいないケースでは、亡くなった方の親や兄弟姉妹が配偶者とともに相続人になる可能性があります。このため、「配偶者がすべて相続する」という認識は誤りであり、正しい知識を持っておくことが重要です。

①子供のいない夫婦の法定相続人とその優先順位

法定相続人には優先順位が定められており、配偶者は常に相続人となります
相続順位の第1順位は、被相続人の「子」と定められています。その「子」がすでに亡くなっていて「孫」がいる場合は、「孫」が第1順位に、その「孫」が亡くなっている場合は「ひ孫」が第1順位となります。

子供がいない(第1順位の該当者がいない)夫婦の場合、配偶者以外の相続人は以下の順位で決まります。

第2順位は、亡くなった方の親や祖父母(直系尊属)です。
※父母が先に亡くなっていて祖父母がいる場合、祖父母となります。

第2順位の相続人が誰もいない場合は、第3順位である亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。

このように、夫婦の状況によって配偶者と共に遺産を分ける相手が異なるため、誰が相続人になるのかを正確に把握しておく必要があります。

詳しくは「私も相続人?法定相続人の範囲と優先順位、相続割合をケース別に図解」も参考にしてください。

②【相続パターン別】誰がどれくらいの割合で財産を相続するのか

法定相続人が誰になるかによって、財産を相続する割合も変わります。

  • 配偶者と亡くなった方の親が相続人になる場合
    相続割合は配偶者が3分の2親が3分の1です。(親が二人なら、3分の1を父母二人で分けるため、6分の1ずつ)
  • 配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になる場合
    配偶者が4分の3兄弟姉妹が4分の1の割合で相続します。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子供である甥や姪が代わりに相続人になることもあります。

子供のいない夫婦の相続で起こりがちな3つのトラブル事例

子供がいない夫婦の相続では、特有のトラブルが発生しやすくなります。
多くの場合、亡くなった方の親族、つまり残された配偶者にとっては義理の家族との間で遺産の分割方法を話し合う必要があります。
これまで関係性が希薄であったり、面識がなかったりする親族との協議は精神的な負担が大きく、スムーズに進まないケースが少なくありません。

ここでは、具体的なトラブル事例を3つ紹介します。

①疎遠だった義理の親族との遺産分割協議が進まない

遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決めなければなりません。子供がいない夫婦の相続では、亡くなった方の親や兄弟姉妹、場合によっては甥や姪も協議の当事者となります。
これまでほとんど交流がなかったり、疎遠だったりする親族と、お金が関わる話し合いをすることは簡単ではありません。

感情的な対立が生まれ、協議がまとまらずに長期化してしまうこともあります。

②相続財産が自宅不動産のみで公平な分割ができない

相続財産が預貯金などの金融資産であれば、法定相続分に応じて分割するのは比較的容易です。
しかし、主な財産が長年住み慣れた自宅不動産のみといったケースは少なくありません。
家という資産は現金のように簡単に分割できないため、誰が家を相続し、他の相続人にどのような形で代償を支払うのかを決める必要があります。

公平な分割方法を見つけるのが難しく、相続トラブルの大きな原因となりがちです。

③代償金が払えず住み慣れた家を売却せざるを得なくなる

残された配偶者が自宅に住み続けることを望む場合、他の相続人に対して法定相続分に相当する現金を代償金として支払うことで解決する方法があります。
しかし、他の相続人の相続分に相当する多額の現金を用意できないケースも多いです。
その結果、やむを得ず住み慣れた家を売却し、その売却代金を相続人間で分けることになります。

相続によって、生活の基盤である住まいを失ってしまうリスクも潜んでいます。

大切なパートナーへ全財産を遺すための具体的な生前対策4選

これまで見てきたようなトラブルを避け、大切な配偶者に確実に遺産を遺すためには、元気なうちに準備しておくことが極めて重要です。
生前対策を講じておくことで、残されたパートナーの精神的・経済的な負担を大きく軽減できます。
ここでは、子供がいない夫婦が検討すべき具体的な生前対策を4つ紹介します。
それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った方法を選択することが大切です。

【対策①】:遺言書を作成して財産の受取人を指定する

最も有効な対策の一つが、遺言書の作成です。
遺言書で「全財産を配偶者に相続させる」と意思表示をしておけば、原則として法定相続よりも遺言の内容が優先されます。これにより、亡くなった方の親や兄弟姉妹が法定相続人になる場合でも、配偶者に財産を集中させることが可能です。

法的に有効な遺言を作成するためには、定められた形式を守る必要があります。

【対策②】:生命保険の受取人を配偶者にして現金を遺す

生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の対象にはなりません。
この仕組みを活用し、生命保険の受取人を配偶者に指定しておくことで、他の相続人の関与なく、まとまった現金を配偶者に直接遺すことが可能です。

この現金は、当面の生活費や、他の相続人への代償金の支払い、相続税の納税資金など、様々な用途に充てられます。

【対策③】:生前贈与を活用して少しずつ財産を移しておく

生前贈与は、生きているうちに財産を配偶者へ渡しておく方法です。
年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない「暦年贈与」や、一定の要件を満たせば夫婦間で居住用不動産を贈与した際に最高2,000万円まで控除される特例などがあります。
計画的に活用することで、相続財産そのものを減らし、将来の相続トラブルのリスクを低減させることができます。

ただし、税制改正などにも注意が必要です。

【対策④】:家族信託で財産の管理と承継方法を決めておく

家族信託は、自分の財産の管理や承継方法を、信頼できる家族に託す制度です。
財産の所有権を形式的に受託者へ移し、契約内容に従って受益者のために管理・運用してもらいます。
認知症などによる判断能力の低下に備えながら、自分の死後、誰に財産を渡すかを柔軟に設計できるのが特徴です。

財産の管理権と実際に利益を得る権利を分けて考えることで、円滑な資産承継を実現します。

最も有効な対策は「公正証書遺言」の作成

子供のいない夫婦が配偶者に全財産を遺すための対策として、最も確実で有効な方法の一つが「公正証書遺言」の作成です。
遺言書にはいくつかの種類がありますが、公正証書遺言は公証人が作成に関与するため、法的な不備で無効になるリスクが極めて低いという大きなメリットがあります。
手間や費用はかかりますが、残された配偶者の将来を守るためには、優先的に検討すべき対策といえます。

①公正証書遺言なら無効になるリスクが低く紛失の心配もない

公正証書遺言は、遺言者が公証人に内容を伝え、公証人が法律の専門家として文書を作成します。
作成には証人2人の立ち会いも必要で、厳格な手続きを経るため、形式の不備によって遺言が無効になる心配がほとんどありません。

また、作成された遺言書の原本は公証役場で保管されるため、紛失したり、誰かに改ざんされたりするリスクを防ぐことができます。

②遺言書を作成する際に知っておきたい「遺留分」の仕組み

遺言書を作成する上で注意すべき点として「遺留分」の存在があります。
遺留分とは、一定の相続人(配偶者、子、直系尊属)に対して法律上最低限保障されている遺産の取り分のことです。
遺言書の内容が、この遺留分を侵害するものであった場合、遺留分を侵害された相続人は、財産を受け取った人に対して金銭の支払いを請求(遺留分侵害額請求)できます。

③兄弟姉妹には遺留分がないため配偶者に全財産を遺すことが可能

子供のいない夫婦の相続において非常に重要なポイントは、兄弟姉妹には遺留分が認められていないことです。遺留分の権利があるのは、配偶者、子、そして直系尊属(親など)のみです。

したがって、相続人が「配偶者と兄弟姉妹」というケースでは、「全財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書を作成すれば、兄弟姉妹から遺留分を請求される心配はありません
これにより、法的に全財産を配偶者に遺すことが可能になります。

複雑な相続問題は専門家と一緒に整理することから始めよう

子供のいない夫婦の相続問題は、誰が相続人になるのか、どのような対策が最適なのか、個々の状況によって大きく異なります。
遺言書の作成や生前贈与、生命保険の活用など、選択肢は多岐にわたりますが、法的な知識や税金の知識も必要となるため、ご自身だけで判断するのは難しいこともあります。

不安や疑問がある場合は、一人で抱え込まず、まずは専門家に相談し、現状や課題について整理することから始めてみるのが賢明です。

はじめての方も安心!
無料相談を予約する

専門家への相談で悩みが解決した事例

相続に関する悩みは、専門家への相談を通じて解決の糸口が見つかることが少なくありません。
自分たちの状況を客観的に整理し、必要な情報や選択肢を得ることで、次にとるべき行動が明確になります。

ここでは、実際に専門家へ相談したことによって、長年の不安が解消されたり、家族で話し合うきっかけができたりした事例について紹介します。

事例1:何から始めるべきかわからなかった親の相続準備

親の相続について、そろそろ準備が必要だと感じてはいたものの、具体的に何から手をつければ良いのか分からず、不安な日々を過ごしていたという相談事例です。
専門家と一緒に相続の全体像や考えるべきことの優先順位を整理したことで、漠然とした不安が解消されました。
これを機に、家族で前向きに話し合うきっかけをつくることができたそうです。

事例2:売却か活用か、判断に迷っていた実家の相続

将来相続する予定の実家について、売却すべきか、賃貸などで活用すべきか、あるいはそのまま保有し続けるべきか、最適な選択肢が分からず悩んでいたというケースです。
専門家から不動産相続の基本的な考え方や手続きの流れ、それぞれの選択肢のメリット・デメリットについて説明を受けました。
その結果、家族で話し合う際に検討すべきポイントが明確になり、冷静な判断ができるようになりました。

事例3:親の認知症による将来のお金の管理への不安

親の物忘れが増えてきたことをきっかけに、将来、認知症になった場合のお金の管理について心配になったという相談事例です。
専門家から、認知症になると銀行口座が凍結されるリスクや、そうした事態に備えるための成年後見制度、家族信託といった具体的な対策について知識を得ることができました。

事前に考えられる備えを整理できたことで、将来への不安が大きく和らいだそうです。

事例4:漠然と感じていた老後資金への不安

老後の生活資金が足りるのか、漠然とした不安を抱えながらも、具体的な対策を何も考えられていなかったというケースです。
専門家との相談を通じて、老後資金を考える上での基本的な視点や、公的年金の仕組み、自分たちの資産状況から「資産寿命」をどう延ばしていくかといった考え方を整理しました。

これにより、将来の資金計画や税対策について具体的に考える第一歩を踏み出せました。

子供のいない夫婦の相続に関するよくある質問

ここでは、子供のいない夫婦の相続について、多くの方が抱える疑問にお答えします。
遺言書と親族との関係、遺産分割協議の必要性、そして事実婚のパートナーへの財産承継など、具体的な質問について解説します。
これらの回答を通じて、ご自身の状況と照らし合わせながら、相続への理解を深めてください。

Q
夫に全財産を相続させる、という遺言書があれば兄弟ともめませんか?
A

遺言書は法定相続に優先するため、法的には全財産を相続できます。
兄弟姉妹には遺留分もないため、金銭を請求される心配もありません。
ただし、相続をめぐるトラブルは法律だけでなく感情も絡みます。

遺言書に、なぜそのような判断をしたのかを記す「付言事項」を加えておくと、ご自身の想いが伝わり、円満な解決につながりやすくなります。

Q
夫の親族とは疎遠です。遺産分割協議は必ず必要ですか?
A

遺言書がない限り、法定相続人全員での遺産分割協議は法律上必須です。
相続人に夫の親や兄弟姉妹が含まれる場合、たとえ疎遠であっても連絡を取り、合意形成を図らなければ遺産の名義変更などの手続きが進められません。
この煩雑な手続きを避けるためにも、生前に遺言書を作成しておくことが最も有効な対策となります。

Q
内縁の妻(事実婚のパートナー)に財産を遺すことはできますか?
A

可能です。
ただし、法律上の婚姻関係にない内縁の妻(夫)には相続権がありません。
そのため、遺言書で財産を「遺贈する」と明確に記しておく必要があります。

他にも、生命保険の受取人に指定する方法や、生前贈与も有効です。
また、将来の関係性をより安定させるために、養子縁組を検討するという選択肢も考えられます。

多くの方に選ばれる3つの理由

相続や老後の悩みは複雑で、どこから手をつければよいか分からない方がほとんどです。
私たちのサービスでは、一人ひとりの状況に寄り添い、安心して相談できる環境を整えています。
ここでは、多くの方に私たちのサービスが選ばれている理由について、3つのポイントに絞ってご紹介します。

丁寧なサポートと利用者のペースを尊重する姿勢が、私たちの強みです。

状況や課題を整理するところから丁寧にサポート

多くの方は、何に困っているのか、何を相談すればよいのかさえ分からない状態からスタートされます。
私たちは、いきなり結論や対策を提示するのではなく、まずはお話を伺いながら、現状や課題について一緒に整理していくことから始めます。
不安な気持ちを言葉にし、一つひとつ整理することで、本当に考えるべきことが明確になります。

利用者のペースを尊重し、落ち着いて考えられる環境を提供

相続や老後のお金の話は、非常にデリケートで不安を感じやすいテーマです。
だからこそ、私たちは過度な表現で不安を煽ったり、結論を急がせたりするようなことはいたしません。
相談される方の気持ちやペースを何よりも尊重し、落ち着いて物事を考え、ご自身にとって最善の選択ができるような環境を提供することを大切にしています。

複雑な悩みを一人で抱え込ませない相談窓口

相続や介護、不動産の問題は、複数の専門知識が絡み合うことが多く、一人で抱え込むにはあまりにも複雑です。
私たちは、そうした複雑な悩みを整理し、必要に応じて税理士や不動産の専門家など、適切なパートナーへつなぐ「相談窓口」としての役割を担っています。
一人で悩まず、まずは第一歩を踏み出すきっかけとしてご活用ください。

はじめての方も安心!
無料相談を予約する

まとめ

子供のいない夫婦の相続では、「全財産が自動的に配偶者に渡る」わけではなく、亡くなった方の親や兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。
これが、疎遠な親族との遺産分割協議など、思わぬトラブルの原因となり得ます。
残された配偶者が安心して生活できるよう、生前の対策が非常に重要です。

特に、兄弟姉妹には遺留分がないため、「配偶者に全財産を相続させる」という内容の公正証書遺言を作成しておくことが、最も有効な対策の一つといえるでしょう。

はじめての方も安心!
無料相談を予約する

自分の場合はどう考える?
不安を整理したい方へ

記事を読んで「自分のケースではどうだろう?」と感じたら、状況を整理するところから始められます。

はじめての方も安心!
無料相談を予約する