相続人がいない場合の財産はどうなる?国庫帰属への流れと生前対策
長谷川 毅
はせがわ たけし
- AFP(日本FP協会認定)
- 証券外務員二種
- 住宅ローンアドバイザー
【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング・相続対策
【自己紹介】保険業界22年。豊富な経験を活かし、最適なライフプランニングから円滑な相続対策まで幅広く対応いたします。
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相続人がいない場合の財産はどうなる?国庫帰属への流れと生前対策
ご自身に万一のことがあった際、財産を引き継ぐ親族がいない場合、その財産がどうなるかご存じでしょうか。
相続人がいない場合の財産は、所定の手続きを経て最終的に国のもの、つまり国庫に帰属します。
この記事では、相続人がいない場合の財産が国庫に渡るまでの流れと、お世話になった人などに財産を遺すための生前対策について解説します。
「相続人がいない」と判断される3つのケース
「相続人がいない」状態とは、具体的にどのような状況を指すのでしょうか。
法律上、相続を承認する人が誰もいない状態と定義され、主に3つのケースが該当します。
これには、そもそも法定相続人が存在しない場合だけでなく、相続人がいても相続する権利を失ったり、権利を放棄したりした場合も含まれます。
他に遺産を引き継ぐ人が見つからない場合に、この状態が確定します。法定相続人の範囲と優先順位については「法定相続人の範囲と優先順位」で詳しく紹介しています。
【ケース1】:法律で定められた法定相続人が一人も存在しない
亡くなった方の配偶者、子、親、兄弟姉妹といった法律で定められた相続人が一人も見つからないケースです。
法定相続人がいない場合は、遺産を法的に引き継ぐ権利を持つ人が当初から存在しないため、「相続人がいない」状態に該当します。
戸籍を調査しても法定相続人が見つからない場合がこれにあたります。
【ケース2】:相続人全員が家庭裁判所で相続放棄の手続きをした
法定相続人が存在しても、その全員が家庭裁判所で相続放棄の手続きをした場合も「相続人がいない」状態になります。
相続放棄は、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も一切引き継がないための手続きです。
これにより、相続人は初めからいなかったものとして扱われるため、結果的に遺産を継承する人が誰もいなくなります。
相続放棄の手続きについては「相続放棄の手続き期限3ヶ月のルール」で詳しく紹介しています。
【ケース3】:相続人が相続権を失った(相続欠格・廃除)
相続人が法律上のルールに基づき相続権を失う「相続欠格」や「廃除」に該当した場合も、相続人がいない状態になり得ます。
相続欠格とは、被相続人を殺害したり、遺言書を偽造したりした場合に自動的に相続権を失う制度です。
廃除とは、被相続人への虐待などがあった場合に、被相続人の意思で家庭裁判所に申し立て、特定の相続人の権利を失わせる制度です。
民法891・892条に定められたルールなどが適用されます。
相続人がいない場合、遺産は最終的に国のもの(国庫に帰属)になる
法定相続人が存在しない、または相続する人が誰もいなくなった場合、亡くなった方の遺産相続に関する手続きを経て、最終的に残った財産は国庫、つまり国に帰属します。
これは民法第959条に定められており、個人の財産が所有者不明のまま放置されることを防ぎ、社会に還元するための仕組みです。
ただし、遺産が即座に国のものになるわけではなく、いくつかの法的な手続きを踏む必要があります。
相続人がいない遺産が国庫に帰属するまでの全ステップ
相続人がいない方の遺産が、最終的に国庫に帰属するまでには、家庭裁判所での複数の手続きが必要です。
このプロセスには、利害関係者による申立てから始まり、債権者や相続人の捜索、連して特別縁故者への財産分与といった段階が含まれます。
全体として1年以上の期間を要することも珍しくありません。
ここでは、その一連の流れをステップごとに解説します。

【ステップ1】:利害関係者が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てる
まず、被相続人の債権者や特定遺贈を受けた者、検察官などの利害関係者が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てます。
相続財産清算人とは、相続人がいない遺産を管理・清算する役割を担う人で、通常は弁護士などの専門家が選ばれます。
2023年の民法改正により、従来の「相続財産管理人」から名称が変更されました。
【ステップ2】:債権者や受遺者を確認するための公告を行う
相続財産清算人が選任されると、家庭裁判所は官報にその旨を公告します。
この公告により、被相続人にお金を貸していた債権者や、遺言によって財産を受け取る権利のある受遺者(特定受遺者)に対して、期間内に申し出るよう促します。
相続財産清算人は、申し出た債権者への債務の支払いや、受遺者への遺贈を、相続財産の中から行います。
【ステップ3】:相続人がいないか捜索するための公告を行う(6ヶ月以上)
債権者らへの公告と並行して、相続財産清算人は本当に相続人がいないかを最終確認するため、6ヶ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行います。
この期間内に相続人であると名乗り出る人が現れれば、その人が財産を相続します。
もし、7年以上行方不明で失踪宣告を受けて死亡したとみなされる人の相続が発生した場合でも、この手続きは同様に進められます。
【ステップ4】:お世話になった人(特別縁故者)への財産分与が行われる
相続人捜索の公告期間が満了しても相続人が現れなかった場合、相続人がいないことが法的に確定します。
その後、3ヶ月以内に「特別縁故者」からの申立てがあれば、家庭裁判所は財産の全部または一部を分与することがあります。
特別縁故者には、被相続人と生計を共にしていた友人や、療養看護に尽くした親族、支援していた法人などが該当します。
【ステップ5】:期間内に申出がなければ残った財産が国庫に帰属する
特別縁故者への財産分与の申立て期間が過ぎるか、申立てがあっても分与が認められなかった場合、もしくは分与してもなお残った相続財産がある場合、その財産が最終的に国庫に帰属することになった旨の手続きがなされます。
相続財産清算人が財産を国に引き継ぎ、すべての手続きが完了します。
この段階をもって、一連の清算手続きは終結します。
お世話になった人が財産を受け取れる「特別縁故者」制度とは
特別縁故者とは、法定相続人ではないものの、亡くなった方と特別な関係にあった人のことを指します。
相続人がいない場合に、家庭裁判所に申し立てることで、遺産の全部または一部を受け取れる可能性がある制度です。
特別縁故者になれるかどうかは、生前の関係性の深さなどを考慮して家庭裁判所が判断します。
この制度は、故人の意思を尊重し、財産を縁の深い人に渡すための重要な仕組みです。
特別縁故者として認められる可能性がある人の具体例
特別縁故者として認められる可能性があるのは、主に3つのケースに分類されます。
財産分与を求めるための申立て手続きと申立て可能な期間
特別縁故者として財産分与を求めるには、家庭裁判所に対して「特別縁故者に対する相続財産分与の審判申立て」を行う必要があります。
この申立てができる期間は、相続人捜索の公告期間(6ヶ月以上)が満了し、相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内と定められています。
この期間を過ぎると申立てができなくなるため、注意が必要です。
財産を国庫に渡さないために生前からできる3つの対策
ご自身の財産を国庫に帰属させるのではなく、お世話になった人や応援したい団体に確実に遺したいと考えるなら、生前からの対策が不可欠です。
対策をすることで、ご自身の意思を明確に示し、財産の行方を指定できます。
ここでは、そのために有効な3つの対策を紹介します。
これらの準備をすることで、安心して将来に備えることが可能です。

【対策1】:お世話になった人や団体に財産を遺す「遺言書」を作成する
最も有効な対策は、法的に有効な遺言書を作成することです。
遺言書があれば、法定相続人以外の個人や法人(NPO、自治体など)を指定して、財産を遺贈(遺言による贈与)できます。
財産を確実に渡すためには、遺言の内容を実現する「遺言執行者」をあらかじめ指定しておくと、手続きがスムーズに進みます。
遺言は、ご自身の最終的な意思を最も明確に反映させる手段です。
【対策2】:亡くなった後の手続きを任せる「死後事務委任契約」を締結する
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後の諸手続きを第三者に依頼する契約です。
具体的には、葬儀や埋葬の手配、役所への届出、公共サービスの解約、医療費や入院費の精算などを任せられます。
財産の承継とは直接異なりますが、身寄りがない場合でも、信頼できる人や法人に死後の整理を託せるため、遺産整理と併せて検討すると安心です。
保険の手続きなども含めて依頼できます。
【対策3】:元気なうちに希望する相手へ財産を渡す「生前贈与」を活用する
生前贈与は、ご自身が元気なうちに、特定の相手に財産を無償で渡す方法です。
土地や建物といった不動産、預貯金、株式など、さまざまな財産を贈与できます。
年間110万円までの基礎控除など、税制上の制度を活用しながら計画的に行うことが重要です。
ご自身の意思で、確実に財産を渡せるだけでなく、相手が喜ぶ姿を直接見届けられるメリットもあります。
家などの財産を特定の人に渡したい場合に有効です。
相続人がいない場合の不安は「マネナビ」でまとめて整理・相談
相続人がいない場合の財産の行方や生前対策には、法律や税金が関わるため、専門的な知識が必要です。遺言書の作成や相続財産清算人の手続きなど、複雑な問題に一人で対応するのは簡単なことではありません。
このような不安や悩みを抱えている場合は、専門家への相談が有効です。
「マネナビ」では、相続に詳しい税理士や弁護士、ファイナンシャルプランナーなど、相談内容に応じた専門家へつなぐお手伝いをしています。
マネナビのサービス詳細については「マネナビのサービス紹介」で詳しく紹介しています。
まずは現状を整理することから始めてはいかがでしょうか。
マネナビを活用した相談事例
マネナビでは、相続や老後に関するさまざまなお悩みについて、専門家と連携しながら解決のサポートをしています。
ここでは、実際に寄せられたご相談の中から、代表的な事例をいくつかご紹介します。
【事例1】何から始めるべきか分からなかった相続準備の全体像と進め方を整理できた(60代・女性)
親の相続について、何から手をつければよいか分からず不安を感じていました。
マネナビに相談したところ、相続の全体像や考えるべきことの優先順位を分かりやすく整理してもらえました。おかげで、家族と具体的に話し合うきっかけができ、落ち着いて準備を進められています。
【事例2】売却か活用かで迷っていた相続予定の実家について最適な対処法が明確になった(50代・男性)
将来相続する予定の実家について、売却すべきか、それとも別の形で活用すべきか、判断に迷っていました。相談を通じて、不動産相続の基本的な考え方や手続きの流れ、判断する上でのポイントが明確になりました。家族で話し合う際の具体的な論点が整理でき、最適な方向性が見えてきました。
【事例3】親の認知症が心配だったが、事前の備えやお金の管理方法を具体的に学べた(60代・女性)
親の物忘れが増え、将来の認知症やそれに伴うお金の管理に強い不安を感じていました。
相談では、認知症とお金の問題に関する基本的な知識や、判断能力が低下する前にできる対策について具体的に教えてもらいました。事前に備えることの重要性を理解し、今からできる準備を始めることができました。
【事例4】漠然と不安だった老後資金について、考えるべき視点や資産寿命の考え方が分かった(50代・男性)
老後の生活費が足りるのか、漠然とした不安を抱えながらも、具体的な計画を立てられずにいました。
マネナビの相談で、老後資金を考える上で重要な視点や、手元の資産を計画的に使っていく「資産寿命」の考え方を学びました。不安の正体が明確になり、今後の資金計画を立てる第一歩を踏み出せました。
相続人がいない場合に関するよくある質問
ここでは、相続人がいない場合の財産に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をご紹介します。
- Q内縁の妻や夫に財産を相続させることはできますか?
- A
内縁の妻や夫とは、法律上の婚姻関係にないため、法定相続人になれず財産を相続する権利はありません。
しかし、生前に遺言書を作成し財産を遺贈することで、財産を渡すことが可能です。
また、相続人が誰もいない場合は、特別縁故者として家庭裁判所に申し立て、財産分与を認められる可能性があります。
- Q誰も相続人がいない場合、故人の借金はどうなりますか?
- A
故人に借金がある場合、相続財産の中から返済されます。
財産で返済しきれない借金はどうなるかというと、相続人がいないため誰も返済義務を負いません。
相続財産清算人の手続きの中で、債権者は法律に基づき配当を受けますが、それで不足する分については事実上回収不能となります。
- Q相続財産清算人の選任にはどのくらいの費用がかかりますか?
- A
家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる際、予納金として数十万円から100万円程度の費用が必要になるのが一般的です。
この費用は原則として相続財産から支払われますが、財産が少ない場合、申立人が負担する可能性があります。
申立てのための収入印紙や郵便切手代なども別途かかります。
マネナビが選ばれる3つの理由
相続や老後のお金に関する悩みは、複雑でデリケートなものが多く、誰に相談すればよいか分からない方も少なくありません。
マネナビでは、利用者が安心して相談できる環境を整えています。
結論を急がず、利用者のペースで落ち着いて考えられる環境を提供
お金に関する悩みは、不安から焦って結論を出しがちです。
マネナビでは、一方的に解決策を提示するのではなく、まず利用者の状況やお気持ちを丁寧に整理することから始めます。
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専門用語を多用せず、判断に必要な情報だけを分かりやすく解説
相続や法律、制度の話は専門用語が多く、難しく感じることが少なくありません。
マネナビでは、専門用語をできるだけ使わず、判断に本当に必要なポイントに絞って分かりやすくお伝えします。
初めて考える方でも全体像をつかみ、ご自身の状況に合った選択肢を理解できるようサポートします。
一人で抱え込ませず、専門家へつなぐ中立的な窓口としてサポート
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マネナビは、そうした悩みを一人で抱え込まずに済むよう、最初の相談窓口としての役割を担っています。
状況を整理した上で、必要に応じて最適な専門家へおつなぎします。
中立的な立場で、利用者に寄り添ったサポートを提供します。
まとめ
相続人がいない場合、財産は最終的に国庫に帰属しますが、遺言や生前贈与といった生前対策を行うことで、ご自身の意思に基づき財産の行方を決められます。
お世話になった人や団体に財産を遺したい場合は、早めに準備を始めることが重要です。
遺言で財産を遺す場合、死亡保険金の受取人指定も有効な手段です。
また、遺贈には相続税がかかる場合があり、基礎控除額を考慮する必要があります。
相続税の基礎控除については「相続税の基礎控除の計算方法」で詳しく紹介しています。
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