遺留分の時効は1年?10年?侵害額請求の期限と請求手続きを解説
吉原 武志
よしはら たけし
- 3級ファイナンシャル・プランニング技能士
【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング
【自己紹介】業界歴14年の経験を活かし、お客様お一人おひとりの生活環境や将来のご希望を丁寧に伺い、寄り添った提案をいたします。
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遺留分の時効は1年?10年?侵害額請求の期限と請求手続きを解説
遺言書によって特定の相続人に多くの遺産が渡され、自身の取り分が著しく少ない場合、「遺留分」を請求する権利があります。しかし、この遺留分侵害額請求には時効があり、権利を知りながら何もしないでいると、請求できなくなる可能性があります。
時効には「遺留分侵害を知った時から1年」という短いものと、「相続開始から10年」という長期のものの2種類が存在します。
本記事では、これらの時効の具体的な内容と起算点、時効を止めるための手続きについて解説します。
そもそも遺留分とは?最低限保障される遺産の取り分を解説
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して法律上保障されている、最低限の遺産の取り分のことです。
被相続人(亡くなった方)は遺言によって自由に財産の処分方法を指定できますが、遺された家族の生活保障という観点から、この遺留分という制度が設けられています。
たとえ遺言書に「全財産を特定の一人に相続させる」と書かれていても、他の相続人は自身の遺留分に相当する金額を請求することが可能です。
遺留分は、相続において自身の権利を守るための重要な仕組みといえます。
遺留分侵害額請求には2種類の時効がある
遺留分侵害額請求の権利は永久に保障されるわけではなく、法律で定められた期間内に行使しないと消滅します。
この請求権の時効には、2つの異なる期間が設定されています。
一つは、遺留分が侵害されていることを知った時から進行する1年という短期の時効です。
もう一つは、相続が開始した時から進行する10年という長期の時効です。
請求の時効は、これらのうち、いずれか早い方が到来した時点で成立し、遺留分を請求する権利が失われてしまいます。
①遺留分侵害を知った時から1年という短期の時効
遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、自身の遺留分が侵害されている事実の両方を知った時から1年以内に行使しなければ時効によって消滅します。
この「知った時」が時効のカウント開始の起点となるため、いつ知ったかが重要になります。
例えば、遺言書の内容を確認し、自分の取り分が法律で定められた遺留分を下回っていると認識した時点などが該当します。
この1年という期間は非常に短いため、遺留分の侵害に気づいた場合は、速やかに行動を起こす必要があります。
②相続の開始から10年が経過すると権利が消滅する
遺留分侵害額請求権には、相続の開始時から10年が経過すると権利が消滅するという、もう一つの期限も定められています。
これは「除斥期間」と呼ばれ、遺留分が侵害されている事実を知っていたかどうかに関わらず、被相続人が亡くなってから10年が経つと一律に権利が失われるものです。
例えば、海外にいて長年遺言書の存在を知らなかったようなケースでも、相続の開始から10年が経過すれば、もはや遺留分を請求することはできません。
この規定は、法律関係を早期に安定させるためのものです。
【重要】時効のカウントが始まる「起算点」はいつ?
遺留分侵害額請求の時効を考える上で最も重要なのは、1年の短期時効のカウントがいつから始まるかという「起算点」です。
この起算点は、単に「被相続人が亡くなった日」ではありません。
「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時」の両方の要件を満たした時点です。
したがって、具体的な状況によって起算点の判断が異なってくるため、自分がいつ権利の侵害を知ったのかを正確に把握することが、請求を行う上で不可欠となります。
①「遺留分を侵害された事実を知った時」の具体的な時点
「遺留分を侵害された事実を知った時」とは、具体的には、遺言書の内容を実際に確認したり、特定の相続人への多額の生前贈与の存在を明確に認識したりした時点を指します。
単に被相続人が亡くなったという事実を知っているだけでは、通常、時効のカウントは始まりません。
自分の取り分が法定の遺留分に満たないことを具体的に認識した時が、1年の時効期間のスタートとなります。
後々のトラブルを避けるためにも、遺留分の侵害を知った経緯や日付を記録しておくことが重要です。
②遺言書の内容を知らない場合は10年の時効が適用される
被相続人が亡くなった事実は知っていても、遺言書の存在自体を知らなかったり、その内容を確認していなかったりするケースでは、1年の短期時効は進行しません。
なぜなら、「遺留分が侵害されていること」を知らないからです。しかし、このような場合でも安心はできません。
相続開始から10年が経過すると、除斥期間によって遺留分を請求する権利そのものが消滅してしまいます。遺言書の内容や他の相続人への贈与された財産について不明な点がある場合は、早めに調査することが求められます。
時効の完成を阻止するために最初に行うべきこと
1年の時効完成が目前に迫っている場合、その進行を止めるための手続きを取らなければなりません。
時効の完成を阻止する方法(時効の完成猶予)として、最も手軽で確実なのは、相手方に対して遺留分侵害額を請求する意思を明確に示すことです。
この権利の行使は、必ずしも訴訟など裁判上の手続きで行う必要はなく、裁判外での意思表示でも有効です。
これにより、時効の進行を一時的に中断させ、その後の交渉や法的手続きのための時間を確保できます。
①配達証明付き内容証明郵便で請求の意思を伝える
遺留分侵害額請求の意思表示を行う最も確実な方法は、「配達証明付き内容証明郵便」を利用することです。内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛に差し出したかを郵便局が証明してくれるサービスです。
これに配達証明を付けることで、相手がその郵便物を受け取った事実と日付も証明できます。
口頭での請求や普通郵便では「言った、言わない」の争いになる可能性がありますが、この方法なら請求の意思表示をした明確な証拠を残せます。
②内容証明郵便を送付すれば時効の進行を止められる
配達証明付き内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示を行うと、時効の完成が猶予されます。
具体的には、相手方に内容証明郵便が到達した時点から6か月間、時効の完成が猶予されることになります。
この6か月の間に、当事者間での交渉や、家庭裁判所への調停申立て、訴訟の提起といった次のステップに進む必要があります。
もし、この期間内に次の法的アクションを起こさないと、時効を止めた効力が失われ、時効が完成してしまう可能性があるため注意が必要です。
時効を中断させた後の遺留分侵害額請求の具体的な3ステップ
内容証明郵便を送付して時効の進行を止めただけでは、自動的にお金が支払われるわけではありません。
そこから具体的な支払いを受けるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
請求の意思を伝えた後は、まず相手方との交渉から始め、それがまとまらなければ家庭裁判所での調停、最終的には訴訟という段階的な手続きに進むのが一般的です。
それぞれのステップについて、以下で具体的に解説します。

ステップ1:まずは当事者間での話し合い(交渉)から始める
内容証明郵便を送付した後の最初のステップは、遺産を多く受け取った相手方との直接の話し合い(交渉)です。
請求する金額や支払い方法、支払い期限などについて協議します。
この段階で双方が合意に至れば、最も時間的・費用的な負担が少なく、円満に解決できます。
合意した内容は、後日の紛争を防ぐために、必ず「合意書」などの書面で残しておくことが重要です。
交渉が難航しそうな場合や、相手が話し合いに応じない場合は、次のステップに進みます。
ステップ2:交渉がまとまらなければ家庭裁判所に調停を申し立てる
当事者間での交渉がまとまらない場合、次の手段として家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てます。
調停とは、裁判官と民間の有識者からなる調停委員が仲介役となり、当事者双方の意見を聞きながら、話し合いによる解決を目指す手続きです。
調停は非公開で行われ、訴訟に比べて手続きが簡易で費用も安く済みます。
第三者が間に入ることで、感情的になっていた当事者も冷静に話し合いを進めやすくなり、合意に至るケースも少なくありません。
ステップ3:調停でも合意できなければ訴訟で解決を目指す
調停でも話し合いがまとまらず、不成立に終わった場合は、最終的に地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起することになります。
訴訟では、当事者双方が法的な主張と証拠を提出し、最終的に裁判官が判決という形で法的な判断を下します。
判決には強制力があるため、相手が支払いに応じない場合には、預金や不動産などの財産を差し押さえる強制執行の手続きを取ることが可能です。
ただし、訴訟は時間と費用がかかり、専門的な知識も必要になるため、弁護士への依頼が一般的です。
遺留分の時効に関する注意すべき特殊なケース
遺留分の時効は、基本的な1年と10年の期間だけでなく、相続の状況によって考慮すべき特殊なケースが存在します。
例えば、遺言の有効性自体を争っている場合や、一度請求した後に発生する金銭債権の時効など、見落としがちな論点があります。
代襲相続や特別受益といった要素が絡むと、侵害額の計算も複雑になり、時効の起算点の判断が難しくなることもあります。
これらの特殊なケースについて、あらかじめ注意点を理解しておくことが重要です。
①遺言の有効性を争っている間も時効は進行する
遺言書の内容に納得できず、「遺言無効確認訴訟」などで遺言の有効性そのものを争っている場合があります。
しかし、注意が必要なのは、この訴訟を行っている間も遺留分侵害額請求権の1年の時効は進行し続けるという点です。
もし、訴訟の結果、遺言が有効と判断された場合、その時にはすでに遺留分の時効が完成してしまっている可能性があります。
このような事態を避けるため、遺言の有効性を争う場合でも、万が一に備えて、並行して内容証明郵便で遺留分を請求する意思表示をしておく必要があります。
②遺留分を請求した後に発生する金銭債権の時効(5年)
遺留分侵害額請求権を行使すると、その権利は相手方に対する具体的な金銭の支払いを求める「金銭債権」に変わります。
この金銭債権にも別途、消滅時効が存在します。
民法の規定により、この金銭債権は権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で時効によって消滅します。
つまり、一度請求して安心していても、その後5年間支払いを受けずに放置していると、支払いを受ける権利自体がなくなってしまうのです。
遺留分侵害額請求権の時効とは別に、この金銭債権の時効管理も必要です。
手続きが複雑で不安な方は専門家への相談がおすすめ
遺留分の時効管理や請求手続きは、民法の条文解釈や判例の知識が必要となり、一般の方には非常に複雑です。特に、時効の起算点の判断や、内容証明郵便の作成、その後の交渉や法的手続きには専門的な対応が求められます。
時効の期間を1日でも過ぎてしまうと、本来受け取れるはずだった財産を取り戻せなくなるという重大な結果につながります。
少しでも不安を感じる場合は、手遅れになる前に、相続問題に詳しい弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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遺留分の時効に関するよくある質問
遺留分の時効に関して、特に多くの方が疑問に思う点について解説します。
- Q遺言書の存在を知らなくても時効は進んでしまうのでしょうか?
- A
遺言書の存在を知らない限り、1年の短期時効は進行しません。
しかし、相続開始から10年が経過すると、遺言書の内容を知らなくても除斥期間によって権利が消滅します。
そのため、長期間相続手続きに関与していない場合は注意が必要です。
- Q一度、内容証明郵便で請求すれば、その後は何もしなくても大丈夫ですか?
- A
いいえ、大丈夫ではありません。
内容証明郵便の送付による時効完成の猶予期間は6か月です。
この期間内に調停の申し立てなど裁判上の請求を行わないと、時効を止めた効力が失われます。
また、請求後に発生した金銭債権にも5年の消滅時効があります。
- Q遺言が無効だと主張している場合でも、遺留分の時効は進みますか?
- A
はい、遺留分の時効は進行します。
遺言の有効性を争う訴訟の結論を待っている間に時効が完成するリスクがあるため、訴訟とは別に、遺留分侵害額請求の意思表示をして時効の進行を止めておく必要があります。法定相続分の権利とは別の手続きです。
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まとめ
遺留分侵害額請求の時効は、「遺留分侵害を知った時から1年」と「相続開始から10年」の2種類があり、いずれか早い方の期間が満了すると権利を失います。
特に1年の時効は短いため、権利侵害の可能性がある場合は、速やかに配達証明付き内容証明郵便で請求の意思表示を行い、時効の完成を阻止することが重要です。
2019年の民法改正により、改正前の遺留分減殺請求とは異なり、現在の遺留分侵害額請求は金銭の支払いを求める権利となっています。
時効の管理を含め、手続きは複雑なため、不安な方は弁護士などの専門家に相談しましょう。
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