自筆証書遺言とは?書き方・注意点と法務局の保管制度を解説
吉原 武志
よしはら たけし
- 3級ファイナンシャル・プランニング技能士
【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング
【自己紹介】業界歴14年の経験を活かし、お客様お一人おひとりの生活環境や将来のご希望を丁寧に伺い、寄り添った提案をいたします。
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自筆証書遺言とは?書き方・注意点と法務局の保管制度を解説
自分で遺言書を作成したいと考えているものの、書き方のルールが分からず無効にならないか、あるいは作成後に紛失や改ざんがされないか、といった不安を抱えていませんか。
この記事を読めば、法的に有効な自筆証書遺言の書き方から注意点、そしてリスクを回避できる法務局の保管制度まで理解できます。
法的に有効な自筆証書遺言を、不備なく自力で完成させられる状態になります。
自筆証書遺言を無効にしないための正しい書き方
公正証書遺言との比較でわかるメリットとデメリット
紛失や検認の手間を解消する「法務局保管制度」の仕組み
自筆証書遺言とは?自分で手軽に作成できる遺言書のこと
自筆証書遺言とは、遺言者本人が、遺言の全文、作成日、氏名をすべて手書きし、押印することで作成する遺言書です。公証役場での手続きが不要なため、思い立った時にいつでも作成でき、費用もほとんどかからない最も手軽な遺言の形式といえます。
ただし、法律で定められた厳格な要件を満たさなければ無効になってしまうため、作成には細心の注意が必要です。
公正証書遺言との違いは?費用・効力・作成の手間を比較
遺言書には自筆証書遺言の他に、公証役場で作成する公正証書遺言があります。
どちらも故人の最終意思を示す重要な書類ですが、作成時の費用や手間、死後の手続きにおいて大きな違いが存在します。それぞれの特徴を理解し、自身に適した方法を選択することが重要です。
ここでは、具体的な違いを3つの観点から比較・解説します。

費用面における両者の違い
費用面で最も大きな違いは、作成費用の有無です。
自筆証書遺言は、紙とペン、印鑑さえあれば作成できるため、原則として費用はかかりません。
一方、公正証書遺言は、公証役場に支払う手数料が必要です。この手数料は相続させる財産の価額によって変動し、数万円から数十万円になることもあります。
加えて、証人2名への依頼費用が発生する場合もあり、費用を抑えたい場合は自筆証書遺言に分があります。
作成の手間と時間における両者の違い
作成の手間と時間も大きく異なります。
自筆証書遺言は、自分一人でいつでもどこでも作成できる手軽さが魅力です。
一方、公正証書遺言は、公証役場での手続きが必須です。
事前に公証人と遺言内容について打ち合わせを行い、必要書類を収集した上で、証人2名とともに公証役場へ出向いて作成します。
そのため、完成までには一定の時間と手間がかかります。
法的効力と死後の手続きにおける両者の違い
法的な効力自体は、自筆証書遺言と公正証書遺言で違いはありません。
しかし、死後の手続きに大きな差が生じます。
自筆証書遺言は、発見された後、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。
これは遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きで、相続人にとっては負担となります。
一方、公正証書遺言は公証人が作成に関与しているため信頼性が高く、検認手続きが不要です。
スムーズに相続手続きを進められるのは公正証書遺言の利点です。
自筆証書遺言で絶対に守るべき5つの法的要件
自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、法律で定められた要件を一つでも欠くと全体が無効になってしまうという厳しい側面があります。
せっかく遺した遺言が無駄にならないよう、正しい書き方のルールを正確に理解することが不可欠です。
ここでは、法的要件を5つに分け、見本を示しながら具体的に解説します。

要件1:全文を自筆で書く(財産目録を除く)
遺言書の本文は、財産目録を除き、すべて遺言者本人が手書きする必要があります。
パソコンで作成したり、他人に代筆を依頼したりした遺言書は無効です。
筆記用具や用紙に特定の書式や様式はありませんが、長期間の保存に耐えられるよう、消えにくいボールペンや万年筆を使用することが推奨されます。
財産目録については、後述する法改正によりパソコンでの作成も認められるようになりました。
要件2:作成した年月日を正確に記載する
遺言書を作成した日付は、「令和6年9月20日」のように、年月日が明確に特定できるように正確に記載しなければなりません。
「令和6年9月吉日」といった記載では日付が特定できないため、無効となります。
遺言書が複数存在する場合、最も新しい日付のものが有効とされるため、日付は遺言の効力を判断する上で非常に重要な要素です。
要件3:氏名を自署する
遺言者本人の氏名を自署する必要があります。遺言書保管制度を利用する場合は戸籍どおりの氏名が必要ですが、民法上は本人を特定できれば通称名やペンネームなどでも有効とされています。ただし、本人特定に疑義が生じないよう、戸籍上の氏名を使用することが確実です。
氏名の記載場所について法的な決まりはありませんが、遺言書の末尾に記載されることが一般的です。財産目録については、各ページへの署名が必要です。重要なのは、誰が作成した遺言書なのかを明確にすることです。
要件4:印鑑を押す(実印でなくても可)
氏名の下に押印が必要です。
使用する印鑑は、市区町村に登録した実印である必要はなく、認印でも構いません。
ただし、ゴム印やスタンプ式の印鑑(シャチハタなど)は印影が変形しやすく、本人性の証明が難しくなる可能性があるため使用を避けるべきです。
偽造のリスクを減らす観点からは、実印を使用して押印することが望ましいとされています。
要件5:訂正・追加には法律で定められた方式を守る
遺言書の内容を訂正したり、文章を追加したりする場合には、法律で定められた厳格なルールに従う必要があります。
具体的には、変更したい箇所を二重線で消し、その近くに正しい文言を書き加えた上で、変更した箇所に押印し、さらに遺言書の末尾などに「〇字削除、〇字追加」と付記して署名します。
この方式を守らない変更は無効となるため、少しでも間違えた場合は、面倒でも全文を書き直す方が安全です。
財産目録はパソコンでの作成が可能に
かつては遺言書のすべてを手書きする必要がありましたが、2019年1月13日の法改正により、相続財産の詳細を記した「財産目録」については、手書き以外の方法での作成が認められるようになりました。
これにより、特に財産が多い場合の作成負担が大幅に緩和されました。
ただし、パソコンなどで作成する場合にも守るべきルールがあります。

財産目録をパソコンで作成する場合のルール
財産目録をパソコンで作成する場合、特定の書式はありませんが、どの財産かを明確に特定できるように記載する必要があります。
例えば、預貯金であれば「銀行名・支店名・預金種別・口座番号」、不動産であれば登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに「所在・地番・家屋番号」などを正確に記載します。
また、パソコンで作成した目録だけでなく、通帳のコピーや登記事項証明書を添付することも可能です。
財産目録の各ページへの署名・押印を忘れないこと
財産目録をパソコンで作成したり、通帳のコピーなどを添付したりする場合、最も重要な注意点は、その財産目録のすべてのページに遺言者本人が署名し、押印することです。
複数枚にわたる場合は、全てのページに署名と押印がなければ、その財産目録は無効となってしまいます。
遺言書本体の署名・押印とは別に、財産目録の各ページへの署名・押印を忘れないよう、細心の注意が必要です。
自筆証書遺言を選ぶことのメリット
自筆証書遺言は、法律で定められた要件さえ満たせば、誰でも手軽かつ低コストで作成できる有効な遺言形式です。
専門家への依頼や公的な手続きが不要であるため、時間や場所を選ばず、自分のペースで遺言内容をじっくり考えられる点が大きな魅力といえます。
その具体的なメリットについて、改めて整理して解説します。

公証役場での手続きが不要で費用を抑えられる
自筆証書遺言は、費用を抑えて作成できる点が魅力の一つです。公正証書遺言と異なり、公証役場へ支払う手数料が不要なため、紙とペン、印鑑があれば作成できます。また、公証人との打ち合わせや証人の手配といった手続きも不要であり、時間的な制約も少ない方法です。
費用や手間を抑えて遺言を残したいと考える人にとって、検討しやすい方法の一つと言えるでしょう
ただし、遺言書保管制度を利用する場合は手数料が発生する点や、法律で定められた形式に従わないと無効になるリスクがある点に注意が必要です。
遺言の内容を誰にも知られることなく秘密にできる
公正証書遺言は、公証人と証人2名が関与して作成されますが、公証人には法律上の守秘義務があり、証人も秘密保持義務を負うため、遺言の内容が他者に知られる心配はありません。原本は公証役場に厳重に保管され、遺言者の死亡まで他人の目に触れることはありません。
一方、自筆証書遺言は、作成から保管までをすべて自分一人で行えるため、遺言の存在自体やその内容を完全に秘密にしておくことが可能です。
プライバシーを重視し、他者に内容を知られたくないと考える場合に有効なメリットです。
自筆証書遺言で陥りがちな3つの落とし穴(デメリット)
手軽に作成できる自筆証書遺言ですが、その手軽さゆえにいくつかのリスクやデメリットも存在します。法的な要件の不備による無効化、保管上の問題、そして死後の相続人の負担など、事前に知っておくべき注意点があります。
これらの落とし穴を理解せず安易に作成すると、かえって家族に混乱を招くことにもなりかねません。

要件不備によって遺言そのものが無効になるリスク
自筆証書遺言は、法律で定められた要件(全文自筆、日付、氏名、押印など)を一つでも満たしていないと、遺言全体が無効になってしまうリスクがあります。
日付の記載漏れや押印忘れといった単純なミスでも無効になるケースは少なくありません。
専門家のチェックを経ずに作成されるため、形式的な不備に気づきにくく、せっかくの遺志が法的に認められないという最も避けたい結果につながる可能性があります。
死後に発見されない、または偽造・改ざんされるリスク
自筆証書遺言は自分で保管するため、死後に相続人がその存在に気づかず、発見されないまま遺産分割が進んでしまう可能性があります。
また、特定の相続人に不利な内容が書かれていた場合、その相続人によって破棄されたり、内容を書き換えられたりする偽造・改ざんのリスクも否定できません。
保管方法を工夫しなければ、遺言者の意思が相続人に届かない危険性があります。
相続人が家庭裁判所で「検認」手続きを行う手間がかかる
自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用しない場合)は、相続開始後、家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければ、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きを進めることができません。
この検認手続きは、相続人が戸籍謄本などの必要書類を収集して家庭裁判所に申し立てる必要があり、時間と手間がかかります。
これは相続人にとって大きな負担となるデメリットですす。
紛失や検認の手間を防ぐ「法務局の遺言書保管制度」とは
自筆証書遺言のデメリットである「紛失・改ざんのリスク」や「検認の手間」を解消するために、2020年7月10日から「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。
これは、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度で、安全性と利便性を大幅に向上させることができます。
自筆証書遺言を作成する際には、この制度の利用を積極的に検討する価値があります。
保管制度を利用する3つの大きな利点
保管制度を利用するメリットは大きく3つあります。
第一に、法務局が原本を安全に保管するため、紛失、盗難、改ざんのリスクがなくなります。
第二に、この制度を利用した遺言書は家庭裁判所での検認が不要となり、相続人の手続き上の負担が大幅に軽減されます。
第三に、遺言者の死亡後、相続人の一人が遺言書の証明書交付を請求すると、他の全相続人に遺言書が保管されている旨が通知され、遺言書の存在が見過ごされることを防ぎます。
遺言書保管制度の申請手続きの流れと必要書類
保管制度の利用手続きは、まず、法律の要件に従って自筆証書遺言を作成します。
次に、申請書を作成し、保管を希望する法務局へ電話等で予約をします。
予約した日時に、遺言者本人が法務局へ出向き、申請書、遺言書、本籍の記載がある住民票の写し、本人確認書類を提出して手続きを行います。
手数料を納付し、保管証を受け取れば手続きは完了します。
法務局の保管制度にかかる手数料の目安
法務局の遺言書保管制度を利用する際にかかる費用は、公正証書遺言を作成する場合と比較して非常に安価です。
申請手数料として、遺言書1通につき3,900円を納める必要があります。
この費用で、遺言書を紛失や改ざんのリスクから守り、死後の検認手続きも不要になるという大きなメリットが得られます。
費用を抑えつつ、自筆証書遺言のデメリットを解消したい場合に最適な選択肢といえます。
法務省 自筆証書遺言書保管制度について
遺言書を自宅で保管する場合の死後の手続き「検認」について
法務局の保管制度を利用せず、自宅などで保管されていた自筆証書遺言が発見された場合、相続手続きを進める前に必ず家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
検認とは、遺言書の形状や状態を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。
この手続きを経ずに遺言を執行したり、封印された遺言書を勝手に開封したりすることは法律で禁じられています。
家庭裁判所での検認手続きの目的と具体的な流れ
検認手続きの目的は、あくまで遺言書の現状を保全することにあり、遺言の内容が有効か無効かを判断するものではありません。
手続きの一般的な流れは、まず相続人の一人が遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。その後、家庭裁判所から相続人全員に検認期日の通知がなされ、指定された日に申立人と他の相続人が立ち会いの下、裁判官が遺言書を開封し、状態を確認するというプロセスで進められます。
検認を怠った場合に科される可能性のある過料
発見された自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して検認手続きを行うことは、法律上の義務です。
この手続きを怠ったり、封のある遺言書を検認前に開封したりした者は、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
過料の制裁を受けたとしても遺言そのものが無効になるわけではありませんが、法律で定められたルールであるため、必ず遵守しなければなりません。
遺言書の作成で迷ったら専門家への相談も有効な選択肢
自筆証書遺言は手軽に作成できる一方で、法的な要件が厳格であり、内容によってはかえって相続トラブルの火種になる可能性も否定できません。
特に、財産の種類が多い場合や、家族関係が複雑な場合には、自分一人で完璧な遺言書を作成するのは難しいこともあります。
そのような場合は、無理せず司法書士や弁護士といった専門家に相談することも重要な選択肢です。
相続財産が多い、または親族関係が複雑な場合は専門家を頼ろう
相続財産に不動産や非上場株式が含まれる、相続人が多い、あるいは相続人同士の関係が良好でないなど、将来的に相続トラブルが発生する可能性が高いケースでは、専門家への相談を強く推奨します。
専門家であれば、法的に有効であることはもちろん、遺留分などにも配慮した、円満な相続を実現するための具体的な内容についてアドバイスが可能です。
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自筆証書遺言に関するよくある質問
ここでは、自筆証書遺言の作成を検討している方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q自筆証書遺言を作成する際の用紙やペンに指定はありますか?
- A
用紙やペンに法律上の指定はありません。
便箋やコピー用紙など、どのような紙でも作成可能です。
ただし、長期保存に耐えられるよう丈夫な紙を選び、鉛筆やフリクションペンなど消えやすい筆記具の使用は避けるべきです。ボールペンや万年筆での作成が一般的です。
- Q内容が異なる自筆証書遺言が複数見つかった場合、どれが有効になりますか?
- A
作成日付が最も新しい遺言書が有効となります。
ただし、古い遺言書の内容と新しい遺言書の内容が抵触しない部分については、古い遺言書も引き続き有効です。
混乱を避けるため、新しい遺言書を作成する際は、古い遺言書を撤回する旨を明記することが望ましいです。
- Q遺言執行者を自筆証書遺言で指定しないと、どのような影響がありますか?
- A
遺言執行者を指定しなくても遺言書は有効です。
しかし、指定がない場合、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きを相続人全員の協力のもとで行う必要があり、手間と時間がかかることがあります。手続きをスムーズに進めるためにも、信頼できる人を遺言執行者に指定しておくことが推奨されます。
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理由3:中立的な立場で、利用者の状況に合った選択肢を一緒に検討
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あくまで中立的な立場から、利用者の家族構成や資産状況、価値観などを踏まえ、最も適した選択肢は何かを一緒に考えます。
時には「何もしない」という結論になることも含め、利用者が心から納得できるゴールを見つけるためのパートナーとして相談に応じます。
まとめ
自筆証書遺言は、費用をかけずに手軽に作成できる有効な遺言方式です。
しかし、その効力を確実なものにするためには、全文自筆、日付、氏名、押印といった厳格な書き方のルールを遵守しなければなりません。
また、紛失や改ざんのリスク、死後の検認手続きの負担といったデメリットを解消するため、法務局の遺言書保管制度の活用が非常に有効です。
これらの点を踏まえ、ご自身の状況に合った最適な方法で、大切なご家族への想いを形にしてください。
自分の場合はどう考える?
不安を整理したい方へ
記事を読んで「自分のケースではどうだろう?」と感じたら、状況を整理するところから始められます。
