みなし贈与とは?贈与税がかかるケースと回避する方法、注意点を解説
中野 雄一
なかの ゆういち
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 認知症サポーター
【専門分野・得意分野】
・相続・終活コンサルティング(不動産、家族信託、介護、お墓など)
・資産運用・ライフプランニング
・生命保険・医療保険
【自己紹介】
1,000世帯以上の相談実績を持つ終活の専門家。相続から不動産・保険などのお悩みに対し、幅広い知識で最適な情報を提供する。
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みなし贈与とは?贈与税がかかるケースと回避する方法、注意点を解説
みなし贈与とは、当事者間に贈与の意思がなくても、実質的に贈与と同じ経済的利益があった場合に、贈与とみなして贈与税を課税する制度です。
家族間での資金援助や不動産の売買などが、意図せず課税対象となる可能性があります。
この記事では、みなし贈与と判断される具体的なケースをわかりやすく解説し、税金のリスクを回避するための対策を紹介します。
みなし贈与とは?通常の贈与との根本的な違いを解説
通常の贈与とみなし贈与の根本的な違いは、当事者の「贈与の意思」を問うかどうかにあります。
民法上の贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで成立します。
一方、相続税法におけるみなし贈与は、贈与の意思がなくても、実質的に財産が移転し、経済的な利益が生じていれば贈与とみなされます。これは、相続税法第7条や第9条などで規定されており、課税の公平性を保つための考え方です。
①「贈与の意思がなくても課税対象」になるのがみなし贈与
みなし贈与の最大の特徴は、財産を渡す側と受け取る側の双方に「贈与である」という認識がなくても課税対象となる点です。
例えば、親が子の借金を肩代わりした場合、親子ともに「贈与」ではなく「援助」のつもりでも、子が得た経済的利益に対して贈与税が課される可能性があります。
このように、贈与の意思の有無は要件とされず、客観的に見て財産の無償移転と同等の効果があったかどうかが判断基準となります。
②みなし贈与は相続税や贈与税の課税逃れを防ぐための制度
みなし贈与という制度は、贈与や相続といった形式をとらずに財産を移転させることで、本来課されるべき贈与税や相続税の負担を不当に免れる行為を防ぐ目的で設けられています。
例えば、時価1億円の土地を1,000万円で売買する形式をとれば、通常の贈与には該当しません。
しかし、このような取引を無制限に認めると課税の公平性が損なわれるため、実質的な利益移転に対して課税できるよう、みなし贈与の規定が存在します。
贈与したつもりがなくても要注意!みなし贈与と判断される代表的な9つのケース
日常生活や家族間の取引の中には、みなし贈与に該当する可能性のある行為が潜んでいます。
国税庁のタックスアンサーでも多くの事例が示されていますが、ここでは特に注意すべき代表的な9つのケースを紹介します。
良かれと思って行った行為が、思わぬ課税につながる可能性があるため、具体的な例を確認しておきましょう。

【ケース1】:市場価格より著しく安い価格で不動産や株式を売却した(低額譲渡)
時価よりも著しく低い価額で財産を譲渡する「低額譲渡」は、みなし贈与の典型例です。
例えば、親が所有する時価5,000万円の土地建物を、子どもに1,000万円で売却した場合、差額の4,000万円が親から子への贈与とみなされる可能性があります。
不動産だけでなく、非上場株式の譲渡でも同様です。
特に個人間や夫婦間での不動産売買では、客観的な評価額を参考に適正な価格で取引することが重要です。
過去の判例では、時価とかけ離れた株価での株式譲渡がみなし贈与と認定されています。
なお、低額譲渡は譲渡した側にも所得税が課される場合があるので注意が必要です。
【ケース2】:対価を受け取らずに不動産や株式の名義を変更した
不動産や株式などの財産を、対価を受け取ることなく子や孫の名義に変更する行為は、通常の贈与に該当します。
例えば、祖父が所有するマンションの1室を、孫に無償で名義変更した場合、その不動産の評価額に相当する金額が贈与とみなされます。
不動産の場合は登記によって所有権の移転が公になるため、税務署に把握されやすい取引の一つです。
【ケース3】:子どもの借金を親が代わりに返済した(債務免除)
子どもが抱える借金(住宅ローンや奨学金など)を親が肩代わりして返済したり、親が子への貸付金を「返さなくていい」と免除したりする行為は、債務免除にあたり、みなし贈与と判断されます。
子どもは借金の返済義務を免れるという経済的利益を受けるため、その免除額に対して贈与税が課されます。
これは、第三者や法人が債務を肩代わりした場合も同様です。
ただし、債務者が債務超過の状態で、自力での返済が著しく困難な状況であると認められる場合は、課税対象外となることもあります。
【ケース4】:返済の約束がないまま親子間でお金を貸し借りした
親子や親族間でお金を貸し借りする際は、それが贈与ではなく貸付であることを客観的に証明する必要があります。
借用書を作成していない、返済期限や利息を決めていない、実際に返済した実績がないといった場合、税務署から「実質的な贈与」とみなされるリスクが高まります。
特に、返済能力を超える高額な貸付や、無利息での貸付は、贈与と認定されやすい傾向があります。
【ケース5】:保険料の負担者と保険金の受取人が異なっていた
生命保険の保険金は、保険料の負担者、被保険者、受取人の関係によって課税される税金の種類が異なります。
例えば、父親が保険料を負担し、被保険者が母親、保険金の受取人が子である生命保険契約で、母親が亡くなり子が満期保険金や死亡保険金を受け取った場合、その保険金は父親から子への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となります。
【ケース6】:親名義の預金口座を子どもの名義に変更した
親が管理・使用していた預金口座の名義を、形式的に子どもの名義に変更しただけでは、贈与とはみなされません。
しかし、その口座の管理・使用を子ども自身が自由に行うようになり、実質的に財産が移転したと認められる場合、口座内の金額が贈与税の対象となる可能性があります。
名義変更の事実だけでなく、誰がその預金を実質的に支配しているかが問われます。
【ケース7】:離婚時に相場を大幅に超える財産分与を行った
離婚に伴う財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を清算する行為であるため、原則として贈与税はかかりません。しかし、分与された財産の額が、婚姻中の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても多すぎると判断される場合、その過大な部分は贈与とみなされる可能性があります。
一般的な目安としては、財産形成への貢献度に応じて按分し、通常は2分の1の割合を超えると課税リスクが生じると考えられています。
【ケース8】:親族の税金を代わりに支払った
本来、納税は国民の義務であり、本人が納めるべきものです。
そのため、子どもの所得税や住民税、固定資産税などを親が代わりに支払った場合、その支払額が親から子への贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
扶養義務者が生活費や教育費を負担するのとは異なり、税金の肩代わりは原則として贈与に該当します。
税率の高い所得を負担している子どもの税負担を軽減する目的で行うと、指摘されるリスクがあります。
【ケース9】:個人年金の契約者と受取人が異なっていた
個人年金保険においても、契約者(保険料負担者)と年金受取人が異なる場合は贈与税の対象となります。
例えば、夫が保険料を支払い、妻が年金受取人となる契約の場合、妻が年金を受け取る権利を得た時点で、その権利の評価額(解約返戻金相当額など)が夫から妻へ贈与されたものとみなされます。
個人が受け取る年金であっても、その原資を誰が負担したかによって課税関係が変わります。
なぜ税務署にみなし贈与が発覚するのか
家族間のことだから税務署には分からないだろうと考えるのは危険です。
税務署、特に国税庁は、多様な情報網を通じて個人のお金の流れを把握しています。
特に不動産取引や相続発生時などは、みなし贈与が発覚しやすいタイミングといえます。
①税務調査で過去のお金の流れが明らかになるため
みなし贈与が発覚する最も多いきっかけは、相続税の税務調査です。
相続が発生すると、税務署は亡くなった方(被相続人)だけでなく、相続人たちの過去数年間にわたる預金口座の入出金履歴を徹底的に調査します。
その過程で、使途不明な多額の出金や、被相続人から相続人への不自然な資金移動が見つかると、生前の贈与、特にみなし贈与がなかったかどうかが厳しく問われます。
調査期間は過去3年から7年に及ぶこともあります。
②申告漏れが発覚すると重いペナルティ(追徴課税)が課される
税務調査などで贈与税の申告漏れが発覚した場合、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして追徴課税が課されます。
これには、申告しなかったことに対する「無申告加算税」、意図的に財産を隠したと判断された場合の「重加算税」、そして納付が遅れたことによる利息にあたる「延滞税」などがあります。
これらの追徴課税は税率が高く、本来の税額を大幅に上回る負担となるケースも少なくありません。
みなし贈与の認定を回避するための4つの具体的な対策
みなし贈与と認定されるリスクは、事前の対策によって大きく軽減できます。
意図しない課税を避けるためには、財産を移転する際にその取引が贈与ではないことを客観的に証明できるようにしておくことが重要です。
特に生前のうちから計画的に準備を進めることが有効です。

【対策1】:親子間の貸し借りでは借用書を作成し返済実績を残す
親子間でお金を貸し借りする場合は、それが贈与ではなく金銭消費貸借契約に基づく貸付であることを明確にする必要があります。
そのために、貸主、借主、金額、返済期間、返済方法、利息などを明記した契約書を作成しましょう。
さらに、契約書の内容通りに、銀行振込などを利用して定期的に返済している実績を残すことが極めて重要です。これにより、単なる贈与ではないことの有力な証拠となります。
【対策2】:年間110万円の贈与税の基礎控除を計画的に活用する
贈与税には、受贈者(財産を受け取った人)一人あたり年間110万円の基礎控除があります。
この非課税枠を活用し、毎年110万円以下の金額を計画的に贈与する方法は、暦年贈与と呼ばれます。
この方法であれば贈与税の申告や納税は不要です。
複数年にわたって贈与することで、まとまった資金を非課税で移転させることが可能です。
ただし、毎年定額を贈与すると、当初から総額を贈与する意図があったとみなされるリスクがあるため、贈与の都度、契約書を作成するなどの工夫が求められます。
【対策3】:相続時精算課税制度や住宅取得資金贈与などの特例を利用する
まとまった財産を生前に贈与したい場合は、国の特例制度の活用を検討しましょう。
代表的なものに「相続時精算課税制度」があります。
これは、原則60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について、累計2,500万円まで非課税となる制度です。
ただし、この制度で贈与した財産は、贈与者の相続時に相続財産に持ち戻して相続税を計算する必要があります。
なお、2024年1月からは、この2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除枠が創設され、この枠内の贈与は相続財産への持ち戻しが不要となりました。
このほか、住宅取得資金の贈与に関する特例など、目的に応じた制度もあります。
【対策4】:贈与契約書を作成して贈与の事実を明確にする
暦年贈与を行う場合でも、その他の贈与を行う場合でも、「贈与契約書」を作成することは非常に有効な対策です。
贈与は口約束でも成立しますが、税務署に対して贈与の事実を客観的に証明するためには、書面で証拠を残しておくことが重要です。
「いつ、誰が、誰に、何を、どのように贈与したか」を明記し、双方が署名捺印することで、贈与があった事実とその時期が明確になります。
これにより、後の税務調査で指摘されるリスクを減らすことができます。
税額の計算方法や計算式を考える以前に、まずは贈与の事実を確定させることが基本です。
みなし贈与に該当しない非課税のケース
すべての財産の移転が贈与税の対象となるわけではありません。
社会通念上、贈与とみなすのが適当でない特定のケースでは、贈与税が非課税となります。
どのような場合に非課税となるのかを理解しておくことで、過度な心配をせずに済みます。
①扶養義務の範囲内でその都度渡す生活費や教育費
夫婦や親子、兄弟姉妹といった扶養義務者間で、生活や教育に必要な費用をその都度渡す場合は、贈与税の対象になりません。例えば、親が一人暮らしの子どもに毎月仕送りをする生活費や、孫の大学の入学金・授業料を祖父母が直接学校に支払うケースなどが該当します。
ただし、これはあくまで「通常必要と認められる範囲」に限られます。将来の生活費や教育費として一度に多額の金銭を渡すと、贈与税が課される可能性があるので注意が必要です。
②債務者が資力を失い返済が困難な場合の債務免除
借金の返済を免除してもらうと、通常はみなし贈与に該当します。
しかし、債務者が失業や倒産などによって資力を失い、借金を返済することが著しく困難な状況にある場合は例外です。
このような状況で債権者が債務を免除した場合、その免除された利益については、贈与税が非課税となることがあります。
これは、債務者の救済という側面が強く、担税力がない人に課税するのは酷であるという配慮に基づいています。
相続や老後のお金の不安は「マネナビ」でまとめて整理
みなし贈与のように、相続やお金にまつわる制度は複雑で、専門的な知識がないと判断が難しいケースが少なくありません。
良かれと思って行った家族間の資金援助が、後になって思わぬ税金の負担につながることもあります。
こうした不安を解消するには、まずご自身の状況を客観的に把握し、何が問題なのかを整理することが第一歩です。
マネナビでは、相続、老後資金、不動産など、人生の後半に訪れるお金の悩みを専門家と一緒に一つひとつ整理し、次にとるべき行動を明確にするお手伝いをしています。
マネナビのご相談事例
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親の相続について、何から手をつければよいか分からず漠然とした不安を抱えていた60代の女性からのご相談です。
マネナビでは、まず相続の全体像や考えるべきことの優先順位を整理しました。
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【事例2】相続予定の実家の扱いに悩んでいた50代男性のケース
将来相続する予定の実家について、売却すべきか、活用すべきか、あるいはそのまま保有すべきか、判断に迷っていた50代男性の事例です。
ご相談を通じて、不動産相続に関する基本的な考え方や手続きの流れ、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを整理しました。
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【事例3】親の認知症によるお金の管理が心配だった60代女性のケース
親の物忘れが増えてきたことから、将来の認知症やそれに伴うお金の管理に不安を感じていた60代女性からのご相談です。
認知症になった場合のお金の問題(口座凍結など)に関する基本的な知識や、成年後見制度、家族信託といった事前の備えについて情報を整理しました。
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【事例4】老後資金に漠然とした不安を抱えていた50代男性のケース
老後の生活資金が足りるのかどうか、漠然とした不安を抱えながらも、具体的な対策を立てられていなかった50代男性の事例です。
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みなし贈与に関するよくある質問
みなし贈与について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
- Q「著しく低い価額」とは具体的にどのくらいの金額ですか?
- A
「著しく低い価額」について、法律で明確な基準は定められていません。国税庁のタックスアンサーによると、個々の具体的事案に基づき判定されるとされています。したがって、専門家への確認が不可欠です。
- Q親の預金を子どもが引き出して使った場合もみなし贈与になりますか?
- A
親に頼まれて生活費や医療費のために預金を引き出し、その支払いに充てた場合は贈与にはなりません。
しかし、親に無断で、あるいは許可を得ていても子ども自身の遊興費やローンの返済などに使った場合は、その金額が親から子への贈与とみなされる可能性があります。
- Qみなし贈与の時効は何年で成立しますか?
- A
贈与税の申告期限から原則として6年で時効(除斥期間)が成立します。
ただし、税務署が意図的な財産隠しなど悪質なケースと判断した場合は、時効が7年に延長されます。
しかし、相続税調査などで過去の贈与が発覚することが多いため、時効の成立を安易に期待するのは非常に危険です。
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まとめ
みなし贈与は、贈与のつもりがなくても、実質的な経済的利益の移転があった場合に贈与税が課される制度です。
特に、親子間の不動産の低額譲渡、借金の肩代わり、名義変更などは、みなし贈与と認定される可能性のある代表的なケースです。
意図しない課税を避けるためには、貸付であれば借用書を作成して返済実績を残す、贈与であれば贈与契約書を作成するなど、取引の事実を客観的に証明できる証拠を残すことが重要です。
また、年間110万円の基礎控除や各種特例制度を計画的に活用することも有効な対策となります。
判断に迷う場合は、専門家に相談してリスクを事前に確認した方が良いでしょう。
自分の場合はどう考える?
不安を整理したい方へ
記事を読んで「自分のケースではどうだろう?」と感じたら、状況を整理するところから始められます。