死亡した月の年金はどうなる?未支給請求と過払い・相続手続きを解説
長谷川 毅
はせがわ たけし
- AFP(日本FP協会認定)
- 証券外務員二種
- 住宅ローンアドバイザー
【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング・相続対策
【自己紹介】保険業界22年。豊富な経験を活かし、最適なライフプランニングから円滑な相続対策まで幅広く対応いたします。
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死亡した月の年金はどうなる?未支給請求と過払い・相続手続きを解説
ご家族が亡くなられた後、「死亡した月の年金はどうなるのか」「手続きはどうすればいいのか」といった疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、亡くなった月までの年金が受給対象であることを解説し、発生する「未支給年金」の請求手続きや、反対に「過払い分」の返還要否を正しく判断するための情報をわかりやすくお伝えします。
相続に関する手続きと合わせて、落ち着いて進められるようにポイントを整理しましょう。
死亡した月までの年金が全額支給の対象であること
年金の後払い制度によって生じる「未支給」と「過払い」の仕組み
未支給年金を受け取れる遺族の範囲と、相続財産との明確な違い
死亡後に行うべき年金手続き(受給停止・請求・返還)の全体像
【結論】死亡した月の年金は日割り計算されず全額支給されます
年金の受給者が死亡した場合、死亡した月までの年金は日割り計算されず、1ヶ月分として全額が支給対象となります。
これは国民年金法および厚生年金保険法で定められており、例えば月の初めに亡くなった場合でも、その月分の満額を受け取る権利があります。
この権利は、故人が受け取るはずだった年金として、遺族が請求手続きを行うことで支払われます。
なぜ死亡後も年金が振り込まれる?年金支給の「後払い」サイクルを解説
年金は、支給月の前月までの分が支払われる「後払い」が原則です。
この仕組みを理解することが、死亡後の手続きを正しく進めるための第一歩となります。
この後払いサイクルにより、どのタイミングで亡くなっても必ず受け取っていない年金(未支給年金)が発生します。

年金の支払いは2ヶ月ごと、直前の2ヶ月分が後から振り込まれる仕組み
公的年金は、原則として偶数月の15日に、それぞれの支払月の前月と前々月の2ヶ月分が指定の口座に振り込まれます。
例えば、6月15日に振り込まれる年金は、4月分と5月分の合計額です。
このため、死亡日と年金の支払日がずれることで、死亡後に年金が振り込まれる現象が起こります。
死亡後に必ず発生する「未支給年金」とは何か
未支給年金とは、年金受給者が亡くなった際に、まだ受け取っていなかった年金のことを指します。
年金は後払いのため、例えば7月に亡くなった場合、6月分と7月分の年金はまだ支払われていません。
これらは8月の定時支払日には振り込まれず、遺族が「未支給年金請求」という手続きを行って初めて受け取ることができます。
これは相続財産とは別の扱いになります。
【要注意】死亡後に振り込まれた年金をそのまま使うリスク
死亡の事実が年金事務所に伝わるタイミングによっては、故人の口座に年金が振り込まれ続けることがあります。
しかし、これを「もらえるお金」だと勘違いして使ってしまうと、後で返還を求められるなどのトラブルに発展する可能性があります。
相続手続きと並行して、年金についても正しい知識で対応することが重要です。

返還義務が発生する「過払い年金」に該当するケース
過払い年金とは、年金の受給権がなくなった月の翌月以降に支払われた年金を指します。
例えば、7月25日に亡くなった場合、受給権は7月分までです。
しかし、死亡届の提出が遅れると、8月や9月分の年金が10月の支払日に振り込まれてしまうことがあります。
この8月分以降の年金は過払いとなり、全額を国に返還しなければなりません。
これは相続財産とは関係なく発生する義務です。
年金の受給停止手続きを放置した場合のペナルティ
年金の受給停止手続き(年金受給者死亡届の提出)を意図的に行わず、不正に年金を受け取り続けた場合、詐欺罪に問われる可能性があります。
悪意がなかったとしても、過払い分の返還義務は生じます。
延滞金が加算されるケースもあるため、故人が亡くなった際は、速やかに手続きを行うことが大切です。
相続の問題と混同せず、年金は独立した手続きとして迅速に進めましょう。
故人の口座凍結前に!死亡届と年金事務所への連絡を急ぐべき理由
金融機関は、口座名義人の死亡を知ると、相続トラブルを防ぐためにその口座を凍結します。口座が凍結されると、預金の引き出しや振り込みなどが一切できなくなります。
過払い年金が振り込まれた後に口座が凍結されると、返還手続きが煩雑になる可能性があります。
市区町村への死亡届提出と、年金事務所への「年金受給者死亡届」の提出は、関連する相続手続きとともに速やかに行いましょう。
未支給年金を受け取れる遺族の範囲と優先順位
未支給年金は、法律で定められた範囲の遺族が請求できます。
これは相続権とは異なる基準で決められており、誰に請求権があるのか、その優先順位はどうなっているのかを正しく理解しておく必要があります。
対象者は「故人と生計を同じくしていた」三親等内の親族
未支給年金を請求できるのは、故人の死亡当時に「生計を同じくしていた」三親等内の親族です。
生計を同じくしていたとは、同居している、あるいは別居でも仕送りなどの経済的な援助があった関係を指します。
具体的には、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、そしてそれ以外の三親等内の親族(甥・姪、おじ・おばなど)が対象となります。
相続人であるかどうかは直接関係ありません。
配偶者が最優先!未支給年金を受け取れる人の順番
未支給年金を受け取れる遺族には、法律で優先順位が定められています。
最も優先順位が高いのは配偶者です。
優先順位は以下の通りです。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他三親等内の親族
例えば、配偶者がいる場合は、子がいたとしても配偶者のみが請求権を持ちます。
相続の法定相続分とは考え方が異なる点に注意が必要です。
未支給年金は相続財産ではないため相続放棄後も請求可能
未支給年金は、民法上の相続財産には含まれません。
これは、受給権者である遺族自身の権利(固有権)として請求するものだからです。
そのため、故人に借金が多く、家庭裁判所で相続放棄の手続きをした場合でも、未支給年金を受け取ることは可能です。
相続財産ではないため、遺産分割協議の対象にもならず、受け取った遺族個人の一時所得として扱われます。
【4ステップで解説】死亡後の年金手続きの全体像と流れ
故人が亡くなった後の年金手続きは、主に4つのステップで進めます。
全体像を把握し、期限内に正しい手順で進めることが重要です。
相続に関連する他の手続きと並行して、計画的に行いましょう。

ステップ1:年金受給者死亡届(報告書)を提出する
年金の受給者が亡くなった際、最初に行うべき手続きの一つに「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出があります。日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている場合は、原則としてこの届出の提出は省略できますが、提出しないと年金が支払われ続け、過払いとなる可能性があります。相続手続きの初動としても重要なアクションです。
提出期限は10日または14日以内!提出が遅れると過払いの原因に
年金受給者死亡届の提出期限は、国民年金の場合は死亡日から14日以内、厚生年金の場合は死亡日から10日以内と定められています。
この期限を過ぎると、死亡後の年金が振り込まれてしまい、後日返還手続きが必要になる可能性が高まります。
他の相続手続きに先駆けて、優先的に対応しましょう。
提出先は最寄りの年金事務所または年金相談センター
年金受給者死亡届は、全国の年金事務所または街角の年金相談センターの窓口に提出します。
郵送での提出も可能です。
提出の際には、故人の年金証書、死亡の事実を証明できる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)が必要になる場合がありますので、事前に確認しておくとスムーズです。
相続手続きと並行して準備を進めましょう。
よくある失敗:マイナンバーが登録済みなら提出不要なケースを見落とす
日本年金機構に故人のマイナンバーが登録されている場合、住民基本台帳ネットワークシステムを通じて死亡情報が連携されるため、原則として「年金受給者死亡届」の提出は不要です。
提出不要かどうかは、事前に年金事務所に電話などで確認できます。
二度手間を防ぐためにも、相続手続きを開始する際にまず確認しましょう。
ステップ2:未支給年金を請求する
年金の受給停止手続きと同時に、まだ支払われていない年金、すなわち未支給年金の請求手続きを進めます。
これは遺族の権利であり、請求しなければ受け取ることはできません。
相続財産とは異なるため、注意が必要です。
確認事項:戸籍謄本や生計同一関係申立書など必要書類を準備する
未支給年金の請求には、「未支給年金・保険給付請求書」のほか、故人との関係を証明する戸籍謄本、請求者と故人が生計を同じくしていたことを証明する書類(住民票など)が必要です。
別居していた場合は「生計同一関係に関する申立書」などを添付します。
必要書類はケースによって異なるため、年金事務所に確認しながら進めるのが確実です。
相続手続きで取得した書類を流用できる場合もあります。
注意点:請求期限の5年を過ぎると時効で受け取れなくなる
未支給年金を請求する権利には、5年の時効が定められています。
具体的には、本来の年金支払日の翌月の初日から5年を過ぎると、時効によって請求権が消滅してしまいます。
故人が亡くなった後は、相続手続きなどで多忙になりますが、忘れずに早めに請求手続きを行いましょう。
補足情報:故人の預金口座が凍結される前に確認すべきこと
未支給年金は請求者の口座に振り込まれますが、故人の口座に入金記録などが残っていると手続きがスムーズです。
金融機関は名義人の死亡を知ると口座を凍結するため、年金証書や通帳の場所は、他の相続関連書類とあわせて早めに確認しておくことが重要です。
ステップ3:遺族年金の請求手続きを進める(対象者のみ)
未支給年金の手続きとは別に、故人によって生計を維持されていた遺族は、自身の生活保障として「遺族年金」を受け取れる場合があります。
受給要件に該当するかどうかを確認し、対象であれば請求手続きを行います。
これは相続とは別の、遺族固有の権利です。
自分が遺族年金の対象になるか簡単なフローチャートで確認
遺族年金を受け取れるかどうかは、故人の年金加入状況や、遺族の年齢、子の有無などによって決まります。
例えば、「国民年金に加入していた故人に扶養されていた、18歳未満の子がいる配偶者」は遺族基礎年金の対象となる可能性があります。
日本年金機構のウェブサイトなどで提供されているフローチャートを使い、自身が対象になるかを確認してみましょう。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いと受給要件
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金は、主に国民年金加入者が亡くなった場合に、その方に扶養されていた子のある配偶者または子が対象です。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金加入者が亡くなった場合に、その方に扶養されていた配偶者、子、父母などが対象となります。
受給要件が複雑なため、年金事務所で相談するのが確実です。
ステップ4:過払い年金の返還手続きを行う(該当者のみ)
死亡届の提出が遅れたなどの理由で、年金が過払いされた場合は、国へ返還する手続きが必要です。
年金事務所から通知が届いたら、速やかに対応しましょう。
これは相続財産とは無関係の義務手続きです。
年金事務所から「年金過払いのご案内」が届いたら内容を確認
年金の過払いが確認されると、日本年金機構から相続人代表者などに対して「年金過払いのご案内」といった通知書が送付されます。
この通知書には、返還が必要な金額や返還理由、納付期限などが記載されていますので、まずはその内容を正確に確認してください。
指定された金融機関で返納手続きを行う
返還は、通知書に同封されている納付書を使って、銀行や郵便局などの金融機関の窓口で行います。
一括での返還が難しい場合は、年金事務所に相談することで分割払いが認められる場合もあります。
故人の相続財産から支払うか、相続人が支払うかは状況によりますが、いずれにせよ速やかな手続きが求められます。
年金や相続の手続きで困ったときの相談先一覧
年金の死亡後手続きは、他の相続手続きと並行して進める必要があり、複雑に感じられることも少なくありません。
不明な点や不安なことがある場合は、専門家に相談することで、正確かつスムーズに手続きを進めることができます。
手続きの代行を依頼したい場合は社会保険労務士
年金の専門家は社会保険労務士(社労士)です。
未支給年金や遺族年金の請求手続きは複雑なケースもあり、書類の準備や提出に不安がある場合、社労士に手続きの代行を依頼することができます。
正確な手続きを任せたい場合に適した相談先です。
相続全体の複雑な悩みは専門家紹介サービスが便利
年金手続きだけでなく、不動産の相続登記、相続税の申告、遺産分割協議など、相続に関する悩みは多岐にわたります。
どこに相談すればよいか分からない場合は、税理士や司法書士といった複数の専門家と連携している専門家紹介サービスを利用するのも一つの方法です。
状況に応じて最適な専門家を紹介してもらえるため、効率的に問題解決を図れます。
死亡した月の年金に関するよくある質問
ここでは、死亡した月の年金に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
相続手続きを進める上での参考にしてください。
- Q死亡後に振り込まれた年金は、そのまま使ってしまっても大丈夫ですか?
- A
使用してはいけません。
死亡した月の翌月分以降の年金が振り込まれた場合、それは過払いとなり全額返還義務があります。
誤って使用すると、後日返還請求を受けることになります。これは相続財産ではないため、速やかに返還手続きを行いましょう。
- Q故人の年金手帳や基礎年金番号通知書が見つからない場合、どうすればいいですか?
- A
基礎年金番号が分からなくても手続きは可能です。
最寄りの年金事務所または年金相談センターの窓口で、本人確認書類を提示して相談すれば、番号を調べてもらえます。マイナンバーカードがあれば、番号の代わりとして手続きを進めることもできます。
- Q相続放棄をした場合でも、死亡した月の未支給年金は受け取れますか?
- A
はい、受け取れます。
未支給年金は相続財産ではなく、請求する遺族固有の権利とされているためです。
したがって、家庭裁判所で相続放棄の手続きを完了した後でも、生計を同じくしていた遺族であれば未支給年金を請求し、受け取ることが可能です。
複雑な相続手続きのお悩みは「マネナビ」にご相談ください
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何から手をつければ良いか分からず不安を感じているなら、一度専門家の視点を取り入れて状況を整理することが大切です。
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まとめ
年金受給者が亡くなった場合、死亡した月までの年金は全額支給の対象となり、生計を共にしていた遺族が「未支給年金」として請求できます。
年金は後払いであるため、死亡届の提出が遅れると過払いが発生し、返還義務が生じる点に注意が必要です。
未支給年金は相続財産ではないため、相続放棄をしても請求可能です。
手続きには期限があるため、速やかに年金事務所で手続きを進めましょう。
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