60代に医療保険は必要か?高額療養費制度を知れば「過度な保障」はいらない

  • 公開日:2026.04.20
  • 更新日:2026.04.26
執筆者

吉原 武志

よしはら たけし

  • 3級ファイナンシャル・プランニング技能士

【専門分野・得意分野】生命保険・ライフプランニング
【自己紹介】業界歴14年の経験を活かし、お客様お一人おひとりの生活環境や将来のご希望を丁寧に伺い、寄り添った提案をいたします。

【所属会社名】株式会社鎌倉新書ライフパートナーズ
https://www.kamakura-life.co.jp/

60代に医療保険は必要か?高額療養費制度を知れば「過度な保障」はいらない

「定年を機に保険を見直したいけれど、病気が増える時期に解約するのは怖い」「保険料が年金生活を圧迫している。でも無保険で入院したら破産するのでは?」「最新のがん治療には数千万円かかると聞いた。やっぱり手厚い保険が必要?」

60代。人生の第2ステージが始まるこの時期、私たちの頭を悩ませるのは「健康」と「お金」のバランスです。保険ショップに相談に行けば、「病気のリスクが高まる今こそ、一生涯の保障を確保しましょう」と、月々1万〜2万円もする保険を勧められることが多いのではないでしょうか。

しかし、2026年の日本において、そのアドバイスは必ずしも正解ではありません。

結論から言いましょう。貯蓄が500万円以上あり、日本の公的医療保険制度を正しく理解している60代にとって、民間の医療保険は「不要」であるケースも多いのです。

本記事では、最強の防波堤である「高額療養費制度」の仕組みから、60代の保険料がどれほど「割高」に設定されているかという裏事情、そして保険に頼らずに病気のリスクをコントロールする「自己保険」の作り方までを徹底解説します。


2026年最新:最強の盾「高額療養費制度」の真実

まず、私たちが民間の生命保険を検討する前に、すでに「強制加入」している最強の保険、公的医療保険の仕組みを復習しましょう。2026年現在の最新基準で解説します。

①窓口負担3割でも、支払額には「天井(上限)」がある

病院の窓口で「3割負担」と言われると、100万円の手術なら30万円払わなければならないと思いがちです。しかし、実際には「高額療養費制度」があるため、一定額以上の支払いは免除されます。

「高額療養費制度」では、所得に応じて自己負担の上限額が決まっています。
60代の方の多くが該当する、年金収入や給与収入が一定水準の区分(『一般所得』区分)の場合、1ヶ月の自己負担上限額は以下の通りです。

上限額:57,600円(外来+入院)

※年収がより高い方は、区分が「上位所得者」となり上限額は上がりますが、それでも「医療費が青天井になることはない」という本質は変わりません。

どんなに難しい手術をして、どれだけ長く入院しても、「健康保険が適用される治療」であれば、1ヶ月の医療費が原則57,600円(※世帯単位)で済むのです(※70歳未満の場合は計算式が異なりますが、概ね8万〜9万円程度です)。

【注意】高額療養費制度でカバーできない「3つの支出」
・先進医療の技術料:重粒子線治療など、保険適用外の「技術料」部分は全額自己負担となります(数百万円かかるケースもあります)。
・差額ベッド代:大部屋ではなく個室を「希望」した場合にかかる追加費用。
・食事代・雑費:入院中の食事代や身の回りの消耗品費。

②70歳以上の窓口負担はどう変わった?

2026年現在、少子高齢化の影響で窓口負担の割合は段階的に見直されています。しかし、重要なのは「窓口の割合(1割〜3割)」ではなく、この「月額上限額」が変わっていないことです。上限さえ決まっていれば、医療費の負担も急に大きくなることはありません。

③長期入院でも怖くない「多数回該当」

同じ病院に4ヶ月以上入院、あるいは治療が長引く場合、4ヶ月目からは上限額がさらに下がります。

一般所得者なら、4ヶ月目から月額 44,400円。
もはや、高級な医療保険の給付金よりも、この制度による「支出のカット」の方が強力です。


60代の医療保険は割に合わない?

なぜ、専門家は「60代に医療保険はいらない」と言うのでしょうか。それは、単純な算数の問題です。

①保険料累計額のシミュレーション

60歳で新しく、入院日額1万円の医療保険に入ったとします。2026年の相場では、月々の保険料は約1万円〜1.2万円程度です。

10,000円(月額) × 12ヶ月 × 20年 = 240万円

80歳までの20年間で、あなたは240万円を保険会社に支払います。

②240万円の元を取るには?

入院日額1万円の保険で、240万円の給付金を受け取るには、合計240日の入院が必要です。

2026年の平均入院日数は約27日(※精神疾患等を除く一般病床では約16日)。人生で合計240日も入院する確率は、統計的に極めて低いです。

つまり、「自分で240万円を貯金しておき、そこから医療費を払う」方が、確率的にも利便性的にも圧倒的に有利なのです。貯金なら、病気にならなければ「旅行」や「孫へのプレゼント」に使えますが、保険料は戻ってきません。


保険会社が語らない「差額ベッド代」と「先進医療」の正体

「でも、個室に入ったら差額ベッド代がかかるでしょ?」「先進医療には数百万円かかるって聞いたわよ」

これらについても詳しく見てみましょう。

①差額ベッド代は「拒否」できる

差額ベッド代は、患者が希望して同意書にサインした場合のみ発生します。

病院側の都合(大部屋がいっぱい等)で個室に入れられた場合、厚生労働省のルールで「差額ベッド代を請求してはならない」と決まっています。

【ポイント】 予備費として50万〜100万円持っていれば、個室に入ることは十分可能です。わざわざそのために高い保険料を払い続ける必要はありません。

②先進医療の発生率は「0.1%以下」

重粒子線治療など、確かに300万円ほどかかる治療は存在します。しかし、それを受ける患者数は極めて限定的です。

【ポイント】 治療の選択肢を広げるため、「先進医療特約だけ」をつければ十分です。月額数百円で済みます。


2026年版:60代のための「保険見直し」チェックリスト

あなたの今の保険が、本当に残すべきものか判定しましょう。

☑ 貯蓄が300万円以上あるか?
 YESなら、日額1万円以下の医療保険は基本的に不要です。
☑ 保険料が月額5,000円を超えているか?
 YESなら、過剰保障の可能性が高いです。
☑ 「特約」がてんこ盛りになっていないか?
 生活習慣病特約、女性医療特約……今の自分に本当に必要か冷静に判断しましょう
☑ 先進医療特約はついているか?
 これだけは、数百円のコストで数百万のリスクをカバーできるため、残す価値があります。
☑ その保険は「更新型」ではないか?
 70歳、80歳で保険料が倍増する更新型は、老後破産の引き金になります。即座に見直しが必要です。


保険を卒業して「自己防衛」へ切り替える3ステップ

これまで「月々の保険料を払うことで、万が一の不安を保険会社に引き受けてもらう」という仕組みを利用してきました。しかし、子どもも独立し、ある程度の資産を築いた60代の今、その仕組みを「卒業」する時が来ているかもしれません。

これからは保険会社に依存する段階から、自分の資産で人生をコントロールする段階へ『レベルアップ』することをイメージしてみてください。ムダな保険を削り、最強の老後家計を作るための具体的な手順です。

ステップ1:医療予備費を「隔離」する

保険を解約して浮いたお金(例:月1.5万円)を、専用の口座に積み立てます。これを「マイ医療保険口座」と呼びましょう。2026年なら、新NISAの成長投資枠などで運用するのも手です。

ステップ2:高額療養費制度の限度額適用認定証を準備する

入院が決まったら(あるいは事前に)、マイナポータル等で限度額適用認定の手続きを。窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

ステップ3:がん対策は「一時金」に絞る

どうしても心配なら、入院日数に関わらず「がんと診断されたら100万円」といった「がん一時金保険」だけに絞ります。がん治療も通院がメイン。入院日数より一時金が重要です。


60代の医療保険見直しに関するよくある質問

Q
共済なら安いから入っておいてもいいのでは?
A

都民共済や県民共済は月2,000円程度でバランスが良いですが、65歳を過ぎると保障内容がガクンと下がります。ある程度の貯蓄(200万〜300万)があるなら、共済すら卒業して「完全自己負担(自己投資)」に回す方が合理的です。

Q
持病があるのですが、今やめると二度と入れないのでは?
A

はい、そのリスクはあります。しかし、「持病があるからこそ、現金を持っておくべき」なのです。保険は「その病気」に関連する入院を対象外にすることもありますが、現金はどんな病気の治療にも使えます。

Q
2026年に医療制度が改悪されると聞きました。
A

自己負担が3割に統一される可能性はあります。しかし、繰り返しになりますが「月額上限額」が撤廃されることはまずありません。なぜなら、それをすると中産階級の高齢者が一気に破産し、国が生活保護で支えなければならなくなるからです。


まとめ|保険に支払うお金を、自分の「人生」に使おう

60代の医療保険見直しは、単なる節約ではありません。それは、「保険会社に自分の運命を預ける」のをやめ、「自分の資産で人生をコントロールする」という宣言です。

  • 高額療養費制度がある限り、医療費で破産することはない。
  • 保険料の累計給付の確率を考えれば、貯金の方が圧倒的に得。
  • 先進医療特約だけは、数百円で残しておく。

マネナビが提案する「60代からのマネーシフト」
・不安(保険)を安心(現金残高)へ変換。
・浮いた固定費を新NISAの配当株へ。
・増えた配当金で、健康維持(人間ドックや良い食事)に投資。

「私の保険、結局どうすればいいの?」「高額療養費の計算、自分だと不安」

その悩み、マネナビの中立的な専門家と一緒に解消しませんか?無駄な保険を見直して、老後資金・医療・介護の備えをしてみましょう。

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